起業を決めた方に向けて、個人事業主・法人それぞれの具体的な手順を解説します。開業届の提出から法人登記まで手続きの流れと必要な費用をステップ別に整理。
事業コンセプトの設計方法や資金の目安もあわせて解説するので、起業準備のロードマップとして活用してください。

起業する前に考えなければならないのは『起業する理由』と『取り扱う商材』、『誰をターゲットにするか』の3点です。それぞれ考えるべきポイントを押さえて、実際に書き出してみましょう。
起業したいと考えているなら、最初に『ビジネスを立ち上げたい理由』を明らかにしましょう。事業を興すにはリスクを取る覚悟と、成功させるという強い気持ちが必要です。
「今の仕事が嫌だから」「会社に行きたくないから」といった理由で、独立起業に踏み切る人もいるかもしれません。しかしその場の一時的な感情で安易に起業しても、成功は難しいでしょう。
事業を興すにあたっては計画が欠かせません。なぜ起業したいのがという軸が曖昧なままでは、計画を煮詰められず起業自体が頓挫してしまう可能性もあります。
起業のやり方を調べている人の多くは、取り組みたいビジネスの分野が決まっているでしょう。提供したい商品やサービスが決まっている場合も多いはずです。
現時点で商材が決まっているなら、改めて市場にニーズがあるのか調査してみましょう。売上を見込める商材だと判断してから、具体的に『ビジネスモデル』を立てます。
ビジネスモデルとは、かんたんにいえば『利益を上げるための仕組み』です。商材を顧客に提供する手段や仕入れ・集客のやり方などを考え、利益を生み出すための設計図に落とし込みます。
起業はしたいけれどまだ分野を決めていない人の場合は、まずは事業を興したい理由をもとに、実現できる商材は何かを考えましょう。自らの得意分野を洗い出すと、扱う商材を決めやすくなります。
現物の商品を作ったり仕入れたりして売るのか、スキルをはじめ目に見えない価値を売るのかも、起業の目的と得意分野によって変わるでしょう。目的と自信の強みに合致していれば、長く情熱を注げます。
ビジネスを始める前に、誰を顧客として狙うのか明確にしておく準備も必要です。ターゲットを設定せずにビジネスを始めてしまうと、有効な集客・販売の戦略を立てられません。
また同じ商材でもターゲットとする層によって、起業後の成功率が大きく変わってきます。
扱いたいサービスを欲している年齢層や性別・属性を、しっかり調査しましょう。ビジネスモデルに一貫性を持たせるために、初期段階でも大まかなターゲットを決めておきます。
起業ではコンセプト設計をどれだけ具体的に作り込めるかによって、ライバルとの差別化の成否が分かれます。
ビジネスを始める理由を軸に商材やターゲットを決めたら、具体的なコンセプトを作るために深掘りしていきましょう。
自分の事業でターゲットとする顧客像が大ざっぱだと、集客や販売の際に注力すべきポイントが分からなくなり、安定した売上につなげる戦略を立てられません。『20〜40代の男性、会社員』という属性だけでは不十分です。
ターゲットの属性だけでなく、行動の特徴や価値観までイメージできるような『ペルソナ』を設定しましょう。ペルソナとはマーケティングにおいて、自社サービスの顧客となる架空の人物像を表す言葉です。
20〜40代の男性会社員でも、業種や年収・家族構成といった要素によって抱える課題は変わってくるでしょう。ペルソナに落とし込むときは、『30代男性で既婚、子どもは小学生、不動産業勤務』のように絞り込んでいくのがポイントです。
ただし企業を相手にするビジネスを考えているなら、ペルソナの業種やポジションなど『企業としての課題』につながる要素に注目します。
自分の興した事業によって、顧客に訪れる『未来』を想像してみましょう。ターゲットに設定した顧客が、新規事業で扱う商品・サービスによって得られる恩恵を推測します。
商品・サービスを利用することで、ターゲットの生活に生じるプラスの変化・解決される課題が具体例です。利用によってもたらされる良い変化をはっきりイメージできるなら、商材やペルソナの設定は間違っていないといえるでしょう。
事業の基本は『顧客の視点』です。独りよがりな計画で価値を提供できないという事態を防ぐためにも、ターゲット層のニーズと事業の方向性をすり合わせなければなりません。
どのようなビジネスを展開するにしても、必ずライバル(競合)は存在します。競合の商品・サービスに埋もれないためにも、差別化するための工夫が必要です。
誰もが驚くようなアイデアを求められるわけではありません。顧客が満足できる内容と自分の強みを考え、強化できるポイントを探していけばよいのです。
例えば飲食店で差別化を考えるとき、資金力のない個人起業家が大手のチェーン店に安さで挑むのは無謀でしょう。代わりにターゲットが好む雰囲気作りや、接客の丁寧さでプラス要素を作っていくのが現実的な差別化の戦略です。
どのポイントを差別化するか決めるには、顧客だけでなくライバルに関する調査も欠かせません。他の事業者が目を付けていない部分が見つかれば、自社にしかない強みを作る足がかりになります。
ビジネスを始めるにあたっては、コンセプト設計だけでなく実際の手続きについても把握しなければなりません。まずは興す事業の規模によって、起業の形態を決めましょう。
『起業』と聞くと、会社(法人)の設立をイメージする人が多いかもしれません。しかし法人化せずに、個人事業主としてビジネスを始めるのも起業の一形態です。
手続きは税務署に『開業届』という書類を提出するだけなので、1人で行う小規模なビジネスならかんたんに始められます。法人化に比べて必要な資金や手続きが少ないため、まず個人事業として事業を興して軌道に乗ってきてから法人化するケースも少なくありません。
確定申告で最大65万円の特別控除を受けられる青色申告をはじめ、税制面で優遇されるのも個人事業主として事業をスタートするメリットです。
規模によっては法人化した方が税負担を軽減できる場合もありますが、個人でスモールスタートするなら個人事業主の方が有利でしょう。
会社を設立して法人として起業するのもひとつの方法です。個人事業主に比べて信頼性が高まるのがメリットで、金融機関から融資を受けるときも個人事業主より審査に通りやすくなる傾向があります。
起業家が立ち上げる会社の形態は、実質的に『株式会社』『合同会社』のどちらかです。合同会社は株式会社に比べて、設立の手続きや運営にかかる手間が少ない形態です。
しかし株式会社の方が社会的な信用度が高く、融資を受けやすいというメリットがあります。将来的に事業を大きくしていきたいなら、最初にかける手間は大きくても株式会社を設立した方がよいでしょう。
個人事業主として起業する場合は、法人設立に比べて手続きがシンプルです。費用をほとんどかけずに始められる一方、開業後に必要な税務手続きも並行して進める必要があります。
開業届の提出前に、事業の内容と屋号(ビジネス上の名称)を決めておきましょう。屋号は必須ではありませんが、設定しておくと銀行口座の開設や請求書・名刺への記載に使えるため、あらかじめ決めておくと開業後の手続きがスムーズになります。
個人事業主として開業するには、事業を開始した日から1か月以内に、納税地を管轄する税務署へ「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出します。手数料は不要で、税務署の窓口のほかe-Tax(国税電子申告・納税システム)でもオンライン提出が可能です。
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最大65万円の特別控除を受けられる青色申告を選択する場合は、開業から2か月以内(1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。提出しない場合は白色申告となるため、節税を重視する方は開業届と同時に提出しておくとよいでしょう。
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業種によっては、開業届のほかに許認可の取得が必要です。飲食店の食品衛生法に基づく営業許可、古物商の古物商許可など、事業内容に応じて確認しておきましょう。また、事業用の銀行口座の開設や、販売・決済手段の整備も開業前に進めておくと開業後の業務がスムーズになります。
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法人として起業する場合の、具体的なプロセスも確認しておきましょう。個人事業を開業する場合は税務署に届出をするだけですが、会社を設立する場合は事業計画書や定款(ていかん)の作成といった手続きが必要です。
会社を設立するなら、法人の種類にかかわらず事業計画書の作成が欠かせません。事業計画書に必要な要素には、以下の項目が挙げられます。
事業をする目的や目標・主なターゲット・市場や競合の状況だけでなく、自社の強みも盛り込んで具体的な計画に落とし込みましょう。経営の方針を決めるビジネスモデルや、お金の動きを予測する財務計画も必要です。
見通しがしっかりした事業であれば、金融機関や各種制度を頼るとき審査に通りやすくなります。
作成した事業計画書をもとに、起業に必要な資金を準備します。個人事業なら業種によっては資金がほとんどなくてもビジネスを始められますが、法人を設立する場合は資本金や会社の設立費用が必要です。
株式会社でも合同会社でも最低1円から設立はできますが、認可されるために一定額以上を用意しなければならない点には注意が必要です。
法人の設立にあたっては、資本金の他に定款の認証を受けるための費用や事業の準備に必要な資金も用意しなければなりません。
例えば飲食店の開業では、店舗とする物件の保証金や内装・設備にかかる費用も求められます。自己資金で足りない分は、事業計画書をもとに金融機関や日本政策金融公庫などに融資を求めましょう。
参考:日本政策金融公庫
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法人の設立では定款(ていかん)を作成して、認証を受ける必要があります。『定款』とは企業の運営原則を定めた書類です。
定款には企業の組織概要や運営に関する基本的な指針・規則を定めた書類であり、法人用の口座設立や行政機関への申請で必要になります。
定款に記載する項目は、会社名や事業の目的・内容・企業の所在地や株主総会・取締役会の概要などです。作成後は企業の本社所在地を管轄する役場(公証役場)に行き、公証人から認証を受けましょう。
定款の認証を受けたら、資本金を払い込んで登記申請を行えば会社の設立が完了します。株式の全てを発起人(事業を興す人)が引き受ける『発起設立』の場合、発起人の銀行口座に資本金の払い込みをするのが一般的です。
資本金の払い込み口座の通帳コピーとともに、払い込みを証する書面を作成して登記申請に入りましょう。企業の本社所在地を管轄する法務局で、登記申請をするのが原則です。
基本的には『登録免許税』の納付や印鑑証明が必要ですが、定款内容によって必要書類が変わってくる場合もあります。事前に法務局や司法書士に相談しましょう。
登記を済ませて法人口座を開設すれば、法人設立の手続きは完了です。しかし事業の開始前には税務署や地方自治体に対しても、税金・雇用関係の届け出が必要です。
従業員を雇う場合の労働法関連の届け出は労働基準監督署に、雇用保険に関しては、公共職業安定所(ハローワーク)に書類を提出しなければいけません。
提出する機関によって必要な書類や提出期限が変わってくるので、事前によく確認しておき届出漏れがないようにしましょう。
起業するためには、具体的にどの程度の資金が必要になるのでしょうか? 個人事業主と合同会社の場合・株式会社の場合に分けて、最低限必要になる費用を紹介します。
個人事業主の場合は税務署に届け出ればよいだけなので、開業するのに費用は特に必要ありません。ビジネスの初期投資や運転資金、目下の生活費を考えておけばよいでしょう。
合同会社の場合も株式会社に比べて、少額の資金で済みます。最低限必要になるのは、定款用の収入印紙4万円(電子定款の場合は0円)と登録免許税(6万円か資本金額×0.7%のいずれか高い方)のほか、2千円程度の謄本手数料です。合計で10万円程度と考えましょう。
手続きを司法書士に任せる場合は、さらに5万~10万円の費用を見ておきます。
参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁(2026年1月時点)
株式会社を設立する場合、紙の定款であれば4万円の収入印紙代に加えて15万円以上の登録免許税・5万円程度の認証手数料と2千円の謄本手数料が必要です。資本金が1円でも、手続きのために合計で25万円ほどの設立費用を準備しなければいけません。
合同会社の場合と同じく登録免許税(株式会社の場合は15万円か資本金×0.7%のいずれか高い方)を納付する必要があります。資本金が2,150万円ほどになると登録免許税が上がっていくので、しっかり計算してシミュレーションしましょう。
新たに興したビジネスを長期的に運営するのは、容易ではありません。たとえ個人事業の場合であっても、経営者として必要な努力をしなければ長く続けられません。
起業する目的を達成するためにも、起業家として必要な意識を心に留めておきましょう。
事業を成功させている起業家は、基本的に勉強家で自分の業界やビジネスにとどまらず幅広いジャンルの勉強をしています。事業を拡大させるにあたって、全く関わってこなかった分野の知識が必要になる可能性もあるでしょう。
勉強さえすれば成功できるわけではありませんが、ビジネスを運営する上で必要な知識や注意すべき点は本やセミナーといった教材から学べます。
ビジネスを続けていると何らかの失敗は起こり得るため、経験から学ぶ姿勢も重要です。失敗を次に生かすにはどのような工夫がいるか考えつつ、論理的・客観的な視点で学びを続ける意識を持ちましょう。
困ったときには他者に頼れる柔軟さも、起業家には必要です。仲間や外部の人間から広く意見を聞き入れ成長しようとする姿勢が、成功につながります。起業仲間や部下から多様な意見を受け入れることで視野が広がり、困難な状況にも臨機応変に対応できるようになるでしょう。
特に初めて起業する場合は、我流で始めるよりも専門家のアドバイスを受けながら進めた方がスムーズです。
専門家や起業経験の豊富な人からアドバイスを受ければ、取り返しのつかない失敗を避けられるだけでなく成功する確率も高くなります。資金に余裕がある場合は、外部のコンサルティングを受けるのも一つの手です。
ビジネス環境は常に変化し続けるため、広く意見を聞きながら成長し続ける姿勢を忘れてはいけません。
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起業の手順は、個人事業主と法人で大きく異なります。まず自分が目指す事業規模や働き方に合った起業形態を選び、必要な手続きと費用を把握した上で準備を進めましょう。
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