本記事では、短期継続融資のメリット・デメリットについてご紹介します。
短期継続融資をうまく活用することで事業の運転資金が安定しやすくなる一方、継続される保証がないなどデメリットもあるため、利用には注意が必要です。
短期継続融資とは|返済期限を延長する方法
短期継続融資とは、契約期間が1年以内となる短期の借入をおこない、手形貸付などの書換をおこなって融資の返済期間を延長する手法のことです。短期転がし(短コロ)と呼ばれる場合もあります。
本来は、1年以内で期日を迎えたタイミングで一括返済が必要になる融資ですが、期日で再び同じ融資を受ける(書換の継続)ことで、実質的に返済期限を延長(繰延べ)できる仕組みです。ただし短期継続融資を受けている間の利息は支払う必要があります。
書換をおこなうときに使われる手形貸付とは、企業が振り出す約束手形を担保として金融機関からお金を借りる、資金調達の方法のひとつです。短期継続融資の借入はもちろん、納税や社員へのボーナスの支払いなど、一時的な資金調達をおこなう場合に利用されます。
短期継続融資を利用するメリット
企業が短期継続融資を利用するメリットは、下記の2つが挙げられます。
- 事実上の借入金の返済が不要になる
- 季節性の事業にも利用できる
どういうことか、くわしく解説します。
事実上の借入金の返済が不要になる
短期継続融資を活用すれば、実質的に利息以外を支払う必要がありません。
一般的な融資の場合、基本的には毎月一定額を返済する必要があります。しかし、短期継続融資なら期日に一括返済すれば問題ありません。また、期日に再び借入をおこなうため、実質的に借入金は返済不要となります。
たとえば、クレジットカード決済を導入している小売店の場合、手元に売上金が振り込まれるまで時間が空いてしまうものです。そこで、短期継続融資を活用すれば、商品を仕入れてから売上が入金されるまでの間、資金繰りを圧迫されずにビジネスを継続できます。
資金繰りが落ちついたタイミングで返済するのもよいですし、利息を支払って借入を継続することも一手です。
季節性の事業にも利用できる
観光地や農業など、季節的な要因で需要が大きく変動するビジネスの場合、短期継続融資を活用すれば、大量の仕入れや人件費の増加などによる事業資金の枯渇リスクを軽減できます。
たとえば、農業をおこなう場合、作物を育てて収穫する時期には人手や農具などが必要になります。一方で収穫が終わって作物を育てない時期は、それほどコストがかかりません。またスキー場を経営する場合、冬場は観光客が集中して資金が必要となりますが、夏場は閑散としています。
このように時季によって需要が大幅に変動するビジネスをおこなう場合も、短期継続融資をうまく活用することで資金のショートを防ぎ、事業を円滑に進めるうえで役立ちます。
短期継続融資を利用するデメリット
短期継続融資を利用するメリットがある一方で、下記のようなデメリットも存在します。
- 期日延長を断られると資金繰りが悪化する
- 継続が業績次第になる
- 金融機関ごとに対応が違う
デメリットについても理解し、適切な利用を心がけましょう。
期日延長を断られると資金繰りが悪化する
短期継続融資の大きなデメリットとして、期日の延長を貸し手に拒否された場合は資金繰りが一気に苦しくなるリスクが挙げられます。場合によっては倒産まで追い込まれるリスクも高まるでしょう。
基本的には売上から返済をおこなうため、特別な事情がなければ融資は継続して受けられるものです。ただし売上が低迷したり資金繰りが悪くなったりすると、貸し手が融資を拒否する可能性が高くなります。
期日延長を断られた場合、企業は別の方法での資金調達を考えなければなりません。貸し手から期日延長を断られる場合も想定して、事前にさまざまな資金調達の方法を考えておくのが望ましいです。
継続が業績次第になる
短期継続融資は、企業の売上を原資として貸し付けをおこなう仕組みです。たとえば利益が十分にでている企業であれば、貸し手としても回収できる可能性が高くなるため、短期継続融資をおこないやすくなります。
一方、業績が振るわずに売上が低迷してしまうと、回収できるかどうかが怪しくなります。もし赤字まで転落してしまうと、貸し倒れのリスクが非常に高くなるため、短期継続融資を継続できず、一括返済を求められてしまいかねません。
この場合も、対処法としては複数の資金調達方法を用意しておいたり、赤字に陥らないよう企業努力をおこなったりすることが対策として挙げられます。
金融機関ごとに対応が違う
短期継続融資は、1999年に金融庁から発表された「金融検査マニュアル」にて、「不要な短期継続融資は控えるように」といった主旨の発表がありました。これを受けて過去には、短期継続融資の数が激減していたのです。
2019年には同マニュアルも廃止されたため、短期継続融資が増えてきました。しかし金融機関によっては、未だに短期継続融資を積極的に提案してこないところもあります。
対処法としては、金融機関に対して会社側から「短期継続融資を利用できないか」と相談してみましょう。金融機関側も承諾しやすくなるよう、利益をしっかり出して健全な財務体質になることも重要です。
短期継続融資利用の流れ
短期継続融資を活用するなら、金融機関に対して経営改善に向けた計画書を提出するなど、安心して融資してもらえるよう提案をおこないましょう。
たとえば、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業の活用が挙げられます。ビジネスモデルを解説した資料や資金実績、事業計画などを書類にまとめて提案することで、金融機関から融資を受けやすくなります。
真剣に短期継続融資を受けたいのであれば、こちらから利用できないかどうか金融機関に相談するのもよいかもしれません。ただし短期継続融資は知名度の高い仕組みではないため、金融機関が相談を受けるのに慣れていないケースも考えられます。
短期継続融資利用時のポイント
短期継続融資を利用する際に押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
- 都道府県ごとに制度が異なる
- 債券・資産の内訳を管理する
- 定期的な返済と使い分ける
各ポイントについて、詳しく解説します。
都道府県ごとに短期継続保証の制度が異なる
短期継続融資のデメリットである「期日延長を断られる」リスクに対処するなら、信用保証協会が提供する短期継続保証の活用をおすすめします。
信用保証協会の短期継続保証を受けるために交渉をおこない、事前の了承を得られれば、貸し手(金融機関)から短期継続融資を受ける際に、継続を拒否されることがありません。
ただし、短期継続保証が提供されていない場合があります。また、短期継続保証は都道府県によって制度の内容が異なります。都道府県によっては利用条件が厳しかったり、「継続は5年間のみ」など期限付きだったりと、さまざまな場合があるため注意が必要です。
とはいえ、短期継続保証は短期継続融資の継続を考えている企業側にとって有力なリスク回避策といえます。まずは、都道府県の信用保証協会まで問い合わせをおこない、制度の有無や詳細を確認しましょう。
債券・資産の内訳を管理する
短期継続融資を受けられるかどうかは、企業の財務状況に大きく左右されます。売掛金や債権、土地・設備・製品など資産の内訳を開示できるように準備しておきましょう。
貸し手(金融機関)が重視しているのは、企業が融資を返済できるかどうかです。もし返済する原資となる資産が十分になければ、「本当にお金を返してもらえるのか」と貸し手が不安になり、融資を受けられないリスクが高まります。
このような貸し手の不安を払拭するには、適切な情報開示と説明が重要です。資産の内訳を詳細に開示するのはもちろん、入金サイクルや取引先との関係性を紹介したり、実際に製品の在庫や機械設備、土地の状況を確認してもらったりするのもよいでしょう。
なお、資産の内訳は正直に答えることが重要です。少しでもよく見せようと虚偽の申告をおこなってしまうと、貸し手(金融機関)との関係性が悪化してしまい、今後の取引に支障がでてしまいかねません。
定期的な返済と使い分ける
短期継続融資は定期的に返済する必要がないため、企業側にとって使い勝手のよい仕組みです。しかし場合によっては金利が高くついてしまい、想像している以上の利息を負担しなければならない場合があります。
金利のリスクを低減するなら、短期継続融資と並行して、定期返済のある通常の融資と使いわけることが重要です。定期返済が必要な融資は、支出を比較的コントロールしやすい設備投資などをおこなうときに有用といえるでしょう。
融資によって得た資金を活かして設備を購入し、そこから生まれた収益で月々の返済をおこなっていけば、資金繰りにも負担を与えにくくなります。
一方で、繁忙期だけ一時的に資金が必要になる場合は短期継続融資の方が、月々の返済をおこなう必要がなく、使い勝手がいいです。
定期的な返済が必要な融資と短期継続融資、目的にあわせてうまく使いわけましょう。
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資金繰りの根本の改善にはなっていない
短期継続融資は資金繰りに悩む企業にとって魅力的な仕組みですが、そもそも資金繰りの根本的な改善策にはなっていません。資金繰りに余裕を持たせるには、業務効率化や集客強化の実現といった、本業を育てていくことが重要です。
無駄な作業をカットしたりツールを導入したりするなど、業務効率を改善すれば、少ない労力で今までどおり、もしくはそれ以上の成果を生み出せるようになります。
金融機関からの融資に依存し過ぎないよう、この機会に企業の体質改善に着手してみませんか。
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まとめ
本記事では短期継続融資のメリット・デメリットや利用の流れ、利用時のポイントなどを解説しました。短期継続融資をうまく活用することで、繁閑の差が大きいビジネスでも資金繰りが安定しやすくなります。
ただし、業績によっては短期継続融資を受けられなかったり、金利の負担が重かったりするなどデメリットもあります。本記事を参考にメリット・デメリットを吟味したうえで、短期継続融資を活用するか検討しましょう。
※本記事の内容は情報提供のみを目的としており、アドバイスを提供するものではありません。記事内容の正確性や妥当性について細心の注意を払っておりますが、それらを保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。ご了承ください。また、記載の制度等は変更される場合がありますので、最新情報をご確認ください。