更新日
2025-06-23

店舗DXとは?メリット・デメリット、成功のポイント、事例を紹介

STORES Magazine編集部
店舗DXとは?メリット・デメリット、成功のポイント、事例を紹介

急速なデジタル化が進む中で、小売業や飲食業といった実店舗の現場にも、変革の波が押し寄せています。その代表例が「店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
本記事では、店舗DXの基本概念から、導入のメリット・デメリット、成功のコツや最新トレンド、業種別の成功事例まで紹介します。

店舗DXとは何か

店舗DXとは、店舗の「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称です。小売業や飲食業をはじめとした実店舗がデジタル技術を導入することで、業務の効率化や顧客体験の向上といった変革を実現する取り組みを指します。

店舗における従来の販売手法では、人的リソースへの依存が高く、非効率ともいえる部分も存在していました。しかし店舗DXにおいてIoTデバイス*やクラウドサービス、AI解析ツールなどの先進技術を取り入れることで、業務の自動化やデータに基づいたマーケティングが可能となります。

単なるIT化ではなく、デジタルを基盤とした経営戦略そのものを見直すことがDXの本質です。店舗の競争力強化と持続的な成長に不可欠なアプローチといえるでしょう。

*IoTデバイス:スマートフォンやタブレットなどのインターネットに接続された機器のこと

店舗DXの仕組みとは

店舗DXの仕組みは、店内外の情報をデジタルで一元管理し、各種データを分析・活用することで運営や販促、顧客対応の精度を高めていくことです。

たとえば、POSレジと連携した販売データをリアルタイムでクラウド上に保存し、在庫の最適化や人気商品の傾向分析がおこなえるようになります。

また、CRM(顧客管理システム)を導入すれば、お客さまの購買履歴や行動パターンに応じてパーソナライズされた販促メッセージを自動送信することも可能です。

店舗DXを導入する目的

店舗がDXを導入する目的は、激化する競争環境の中でお客さまに選ばれる店舗となるために、顧客体験を進化させることにあります。

多様化するお客さまのニーズにスピーディに対応するには、従来の方法では限界があります。デジタル技術を駆使して店舗運営の効率を上げつつ、お客さま一人ひとりに寄り添ったサービスを提供することが求められるのです。

また、人手不足や業務負荷といった店舗運営における課題にも、DXは大きな解決手段となります。業務の自動化によってスタッフの業務負担を軽減し、空いた時間を接客や店舗改善などの高付加価値業務に充てられるようになるため、働き方改革にもつながります。

店舗DXが重要な理由

店舗DXが注目されているのは、単なる業務のIT化を超えて、企業が直面する課題である消費行動の変化と人手不足への解決策となるためです。
DXを導入することにより、顧客体験の進化だけでなく、限られた人材で最大の効果を生み出す業務設計が可能になります。

デジタル化が必要不可欠

消費者の行動がスマートフォン中心にシフトし、購買プロセスそのものがオンライン前提になりつつある今、店舗の存在意義も変化しています。

リアルとデジタルの融合が求められる時代において、デジタル化を通じた顧客接点の最適化は避けて通れない課題です。たとえば、店舗DXを導入することで、お客さまがネットショップで見た商品を店頭で即座に試せるようにしたり、来店前の購入履歴を活用してスタッフがパーソナルな提案をしたりできるようになります。

その結果、店舗の価値は「売る場」から「体験する場」へと転換し、消費者の期待にこたえることができるのです。さらに、販売データや在庫情報がリアルタイムで可視化されることで、現場の判断も迅速かつ的確になります。

人材不足

少子高齢化が進む日本では、店舗ビジネスにおける人手不足が深刻化しています。とくに小売・サービス業では、正社員・パートアルバイトのいずれにおいても約6割の事業所が「人手が不足している」と回答しており、これは一過性ではなく、解消の見通しが立たない「構造的な不足」であると捉える企業が多数を占めています(※)。

こうした状況を打開する鍵となるのが店舗DXです。たとえば、セルフレジの導入により、従来2〜3人がかりでおこなっていた業務を1人でこなせるようになり、人的コストの削減に直結します。またAIを活用したチャットボットによるお客さま対応や、業務スケジューリングの自動化により、スタッフの負担軽減とモチベーション維持にもつながります。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「―ICT設備投資、「業務効率の向上」で7割弱、「人手不足の解消」で3割が効果あり― ―人材確保・採用の取組で、「求人募集時の賃金の引上げ」がトップ―」

店舗DXの3つのメリット

店舗DXを導入することで得られる効果は多岐にわたりますが、特に注目すべきなのは「業務効率化」「コスト削減」「顧客満足度の向上」の3点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務効率化

従来の店舗運営では、在庫の確認や売上の集計、スタッフ間の連絡など、時間と労力を要する業務が数多く存在していました。
作業をシステムで自動化することで、手間のかかる業務を省き、スタッフが本来注力すべき接客や売上向上の活動に専念できる環境が整います。

たとえば、旅館や飲食店では、予約システムやPOSレジの導入により、在庫や売上のデータが自動で集約・分析されるようになり、無駄な仕入れや人員配置の見直しが可能になります。
その結果、業務に余裕が生まれ、スタッフの休暇取得や働き方改革にもつながります。

コストが抑えられる

紙の帳票や手作業による記録・管理は、印刷費や人件費、ミスによる損失などによるコスト増加につながります。

店舗DXの一環としてペーパーレス化を推進すれば、コストの無駄を一掃することが可能です。たとえば、クラウド上で勤怠管理や会計処理をおこなえるようになれば、バックオフィス業務にかかる時間とコストが大幅に削減されます。

また、AIを活用した来店予測や注文分析を導入することで、食材や商品の過剰仕入れを防ぎ、フードロスの削減にもつながります。

顧客満足度の向上

現代の消費者は、より便利でパーソナライズされた体験を求めています。店舗DXを活用することで、お客さま一人ひとりの購買履歴や行動データを基に、最適なサービスや商品提案が可能になります。

たとえば、ネットショップと店舗の情報を連携させ、オンラインで閲覧した商品を実店舗で試せるようにしたり、来店前に顧客情報を確認しておくことで、お名前を把握した上での接客や個別対応をスムーズにおこなえたりするようになります。

サービス業では、情報共有がお客さまとの距離を縮め、サービス品質の向上に直結する可能性もあります。加えて、顔認証によるチェックイン・アウトの自動化や、店舗混雑状況の可視化など、利便性を高める取り組みによってお客さまとの信頼関係が強化され、リピート率やクチコミ評価の向上にもつながります。

店舗DXの3つの問題点

店舗DXは、業務の効率化や顧客満足度の向上など多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかの乗り越えるべき課題もあります。店舗DXの3つの問題点について詳しく見ていきましょう。

初期費用がかかる

店舗DXの最初の障壁として、多くの経営者が直面するのが初期投資の問題です。POSレジやクラウドシステム、顔認識端末など、デジタル技術の導入には多かれ少なかれまとまった資金が必要になります。

システムの構築費用だけでなく、導入前の環境整備や導入後の保守費用、カスタマイズにかかる追加費用も見込まなければなりません。特に中小企業や個人経営の店舗では、この初期投資が経営にとって重い負担になるケースもあります。

そのため、店舗DXの導入には単なる費用ではなく「投資」として捉える意識改革が求められます。将来的にどれほどの業務効率や利益改善が見込めるのか、費用対効果のシミュレーションを綿密におこない、必要な部分から段階的に導入する戦略が現実的でしょう。

従業員の教育が必要

どれほど優れたシステムを導入したとしても、それを使いこなす人材がいなければ意味がありません。

店舗にはIT機器に不慣れなスタッフが在籍している場合もあるため、システム導入直後は混乱や戸惑いが生じることも少なくありません。実際、タブレットでの注文管理やクラウドシステムによる在庫管理など、あらたなオペレーションに慣れるまでには一定の時間と労力が必要です。

したがって、店舗DXを成功させるためには、従業員への丁寧な研修が必要です。トレーニングプログラムの整備、実践的なOJT、マニュアルの整備などを通じて、現場に即した教育体制を整えることが求められます。

また、継続的な学習機会を提供することで、スキルの定着と意識向上にもつなげていくことが重要です。

セキュリティ対策

デジタル化の進展とともに増加しているのが、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクです。お客さまの個人情報や売上データ、業務上の機密情報がクラウド上やネットワークで管理されるようになれば、当然ながらセキュリティ対策の重要性も増してきます。
一度でも情報流出が発生すれば、店舗の信頼は著しく低下し、経営そのものに深刻なダメージを与えかねません。

このようなリスクに備えるには、最新のセキュリティシステムを導入するだけでなく、従業員のセキュリティ意識を高める取り組みも並行して進める必要があります。

定期的なセキュリティ研修やリスク管理マニュアルの整備、外部の専門家による監査の実施など、複数の対策を組み合わせることでセキュリティリスクを軽減できます。

店舗DXの種類

店舗DXは、目的や実施方法に応じて「店舗運用のDX化」と「店舗体験のDX化」に分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

店舗運用のDX化

店舗運用のDX化とは、主に店舗内部の業務プロセスをデジタル技術によって効率化する取り組みを指します。代表的な例としては、キャッシュレス決済の導入やセルフレジの設置、予約管理・在庫管理システムの導入などがあります。

店舗体験のDX化

店舗体験のDX化は、来店をともなわないあたらしい購買体験の提供を目的とした取り組みです。たとえば、オンライン接客ツールを通じてスタッフが商品を紹介したり、ネットショップやバーチャル店舗でのシミュレーションを通じて、実店舗に近い体験をお客さまに提供したりする形が主流です。

店舗DXの導入成功事例

店舗のデジタル化は、業種を問わず大きな効果を発揮しています。ここではクリニック・小売業の業種で実際にDXを導入し、業務効率や顧客満足度を大きく改善した事例を紹介します。

クリニック

千葉県千葉市の板谷内科クリニックでは、コロナ禍での発熱外来やワクチン接種の予約業務が集中し、従来の電話予約体制では限界を迎えていました。

回線は1本のみで電話は鳴り止まず、業務の手が止まるばかりか、物理的に電話機が故障するほどの負担がかかっていたのです。さらに、電話応対による予約では、聞き間違いや名前の表記ミスなども多く、カルテの作成や診察準備にまで支障が出ていました。

そこで同院は、オンライン予約システム「STORES 予約」を導入し、予約業務のデジタル化に踏み切りました。スマートフォンやPCからの予約を可能にすることで、電話以外のあらたな予約チャネルを確保し、患者さまが自身のタイミングで予約を取れる環境を整えました。

また、アンケート機能を活用して問診票の事前入力を促し、診察前の情報収集を自動化。選択式の設問により、医師やスタッフが必要とする情報を正確に取得できるようになり、準備時間の短縮と情報の正確性が飛躍的に向上しました。

結果として、予約業務にかかわるスタッフの負担が軽減され、診療の効率が大きく改善し、患者さまにとってもストレスのない予約が可能となりました。

詳細はこちら:板谷内科クリニック

小売業

ポルトガル発のオーガニック固形石鹸を扱うセレクトショップ「Parker's choice」は、関西圏に実店舗を展開しつつ、ネットショップ運営にも力を入れている注目のブランドです。オーナーの娘さんの肌トラブルをきっかけに誕生したこの事業は、「オーガニックが特別ではなく、選ばない日常を」という理念を掲げています。

Parker's choiceが店舗運営で頼りにしているのが、「STORES ネットショップ」です。操作性に優れた管理画面と、購入者にも見やすいUI(ユーザーインターフェース)が導入の決め手となりました。

STORES レジ では、商品別・期間別の売上データを日々確認できるため、リアルタイムでの接客改善に活用されています。売れ筋の把握が即座にでき、スタッフとの共有もスムーズです。アプリ画面の視認性も高く、会計ミスが起こりにくい設計になっていることから、現場でのオペレーション負荷の軽減に成功しました。

詳細はこちら:Parker's choice

店舗DXの導入を成功させるためのコツ

店舗DXを導入しても、ツールを活用しきれなければ本来の効果は発揮されません。導入を成功させるためには、目的に合ったシステム選定や現場のスタッフの理解促進、導入後の継続的な改善が不可欠です。ここでは、店舗DXを円滑に進めるために重要な3つのポイントを紹介します。

目的にあったツールを導入する

店舗DXの成功には、「何を解決したいのか」という目的に立ち返ったうえで、必要なツールを選定することが重要です。たとえば、人手不足が課題であれば、セルフレジや自動発注システムなど業務を効率化するツールが適しています。

多機能なサービスに目を奪われがちですが、必要な機能に絞ることでコストも抑えられ、現場への浸透もスムーズになります。

店舗スタッフの理解とツール習得の支援をする

システム導入はあくまでも手段であり、実際にそれを使うのは現場のスタッフです。DX導入が現場にとって負担やストレスになってしまっては本末転倒です。そのためには、ツール導入前からスタッフへの丁寧な説明や操作体験を通じて、「なぜこのシステムが必要なのか」「どのように業務が楽になるのか」を共有することが欠かせません。

また、導入後も継続的にサポートをおこない、困ったときにはすぐ相談できる環境を整えることで、現場の不安を払拭し、定着率を高めることができます。

定期的に改善する

店舗DXは、一度導入して終わりではありません。運用を始めた後にこそ、現場の声や業績データをもとにした「改善」が求められます。

たとえば、予約システムを導入したあとに「予約が集中する時間帯に対応できない」といった課題が生じれば、受付枠の調整や自動メッセージ機能の強化など、実情に即した修正を加える必要があります。
また、技術やお客さまのニーズは日々変化しているため、定期的にツールの活用状況を見直し、必要に応じてアップデートや入れ替えを実施する柔軟性も重要です。

店舗DXの現在のトレンド

近年注目を集めているのが、動画の中に視聴者の操作を取り入れた「インタラクティブ動画」です。従来の一方通行の映像とは異なり、動画内で商品を選んだり、詳細情報にアクセスできる機能を備えたりすることで、視聴者の関与度を高め、購買や問い合わせといったアクションにつなげやすくなります。

特にSNS広告やEC連携型の動画コマースとの相性がよく、来店前の顧客接点を増やす手段として、小売や飲食をはじめとした幅広い業界で導入が進んでいます。

まとめ

店舗DXは単なる業務のIT化ではなく、ビジネスモデルそのものを変革し、顧客体験と経営効率を同時に高める戦略的取り組みです。業務の自動化、コスト削減、顧客満足の向上といった直接的なメリットに加え、少子高齢化による人材不足への対応策としても、その重要性はますます高まっています。一方で、初期費用や従業員の教育、セキュリティ対策といった課題も存在するため、計画的かつ段階的な導入が求められます。

店舗DXの成功には、目的に合ったツールの選定、スタッフの理解促進、定期的な改善が不可欠です。また、インタラクティブ動画などのトレンドにも注目し、店舗に合った形で活用することで、他社との差別化が可能となるでしょう。今後も進化を続ける店舗DXの波に乗り、持続的な成長とお客さまとのあらたな関係構築を目指していきましょう。

お役立ち資料

STORES スタンダードプラン

決済・レジ・ネットショップ・予約・データ活用など、お店作りに欠かせないサービスを STORES なら月額3,300円と驚きの決済手数料でご利用いただけます。

資料ダウンロード