店舗を運営している方の中には、ポイントシステムに興味があるものの具体的な仕組みや注意点が分からず、導入をためらっている方もいるのではないでしょうか。ポイントシステムを導入すると、ポイントサービスをスムーズに管理できるようになり、顧客情報の分析や販売促進などにつなげることが可能です。ただし、注意すべきポイントもあります。
この記事では、ポイントシステムの仕組みや導入のメリット、複数社のサービスの中から選ぶ際のポイントと注意点などについて解説します。
ポイントシステムとその仕組みとは?
ポイントシステムは、お客さまの購買意欲を高め、リピート率を向上させる効果的な販促ツールです。ここではポイントシステムの概要や仕組みについて解説します。
ポイントシステムとは?
ポイントシステムとは、お客さまへポイントサービスを提供するために必要なITシステムのことです。ポイントシステムを導入すると、お客さまが買い物をしたりサービスを利用したりした際にポイントを付与できます。また、お客さまのポイント数を管理したり、有効期限を過ぎた後は利用できないようにしたりすることも可能です。
ポイントサービスを導入するケースは多く、近年は民間企業だけでなく国や地方自治体が活用するケースも見られるようになりました。たとえば、マイナポイント事業は国がおこなったポイントサービスの例です。
参考:総務省「マイナポイント事業」(2025年5月時点)
ポイントシステムの仕組みとは?
ポイントシステムの仕組みは、利用者の特定の行動に対してポイントを付与し、貯めたポイントを何らかの特典と交換するものです。おおまかな流れは以下のようになります。
- お客さまが対象となる行動を起こす:買い物をする、サービスを利用する、アプリを活用する
- 店舗がポイントを付与する:お客さまにポイントが付与され、アカウントなどに貯まる
- お客さまがポイントを利用・交換する:支払金額の割引や商品との交換など特典を受ける
ポイントは、「購入金額100円ごとに1ポイント」など、あらかじめ決まった割合に応じて付与(還元)されます。
なお、付与するポイントの元手となる資金を負担するのは、ポイントシステムを提供する会社ではなく、サービスを導入した企業や店舗です。
ポイントシステム導入の4つの目的とメリット
ポイントシステムを導入した企業や店舗は、ポイントの原資を負担しなければならないため、損になるのではと思う方もいるのではないでしょうか。しかし、実はポイントシステムの導入にはさまざまなメリットがあります。
ここでは、企業がポイントシステムを導入する目的やメリットについて解説します。
1. 顧客情報の分析に活用できる
ポイントシステムを導入する大きなメリットとして、顧客情報が手に入り、メイン層のニーズの分析に役立てられることが挙げられます。
なぜなら、ポイントサービスを利用しようとするお客さまは会員登録が必要になるからです。お客さまが情報登録をすることで、氏名や年齢、性別、住所、電話番号などが分かり、さらに購買履歴なども残ります。
顧客情報を分析した結果を活かせば、属性を考慮した品ぞろえにするなど効果的なマーケティング施策を立てることが可能です。その結果、売上向上が見込めます。
2. 販売促進や来店促進につながる
販売促進やお客さまの来店促進につながることも、ポイントサービスを導入するメリットです。販売や来店を促進する方法としては、割引キャンペーンを展開したり、大々的に広告を打ったりする方法があります。とはいえ、費用もかかるため、頻繁に取れる方法ではありません。
ポイントサービスを導入すると、買い物するだけでポイントがもらえることから、お客さまに選ばれやすくなります。実際、ポイ活に関する調査では「ポイントが貯まることでサービスの利用頻度が上がる」と答えた割合が、87.5%にも上りました(※)。大きなプロモーションをしなくても、販売や来店を促進する効果を得ることが可能です。
(※)出典:GMOリピータス『「ポイ活」に関する調査 』(2025年5月時点)
3. 顧客エンゲージメントが高まる
ポイントサービスをうまく運用すると、顧客ロイヤリティを高めることにもつながります。
たとえば、獲得ポイントに応じてランクアップするランクシステムを導入し、上位ランク者には特別クーポンを配布したり、限定イベントに招待したりする仕組みを取り入れたとしましょう。
ポイントを貯めるほどお得になるため、お客さまの継続利用が見込め、さらに継続するうちに愛着も生まれるでしょう。周囲に商品や店舗をすすめるようになれば、新規顧客獲得につながる可能性もあります。
4. 顧客の単価向上が期待できる
ポイントサービスを販売施策ツールとしてうまく活用することで、顧客単価の向上も期待できます。
たとえば「購入金額5000円以上で還元率が1%から2%にアップ」というキャンペーンを実施した場合、4500円購入したお客さまは「あと500円分何かを買おう」と考える可能性が高くなります。結果的に顧客単価の向上が期待できるでしょう。
また、商品やサービスを説明する際「これだけポイントが貯まりお得になる」といった情報を挟むとお客さまの興味を引きやすく、購買につながります。
ポイントシステム導入前に押さえるべきポイント
ポイントシステムは自作も可能ですが、事業会社が提供するサービスを導入するのもおすすめです。
ただし、ポイントシステムにはさまざまな種類があり、それぞれ費用や操作性、特徴が異なります。自社に適さないポイントシステムをよくわからずに選ぶと、うまく運用できずに効果が出ないおそれもあります。
ここでは、ポイントシステムを導入する際に押さえておきたいポイントについて解説します。
自社に合ったタイプのポイントシステムを選ぼう
一般的に、ポイントシステムは以下の3つのタイプに分かれます。
- 実店舗型
- 多店舗型
- EC連携型
それぞれのタイプの特徴を理解し、自社の販売形態や経営形態にあっているシステムを選ぶことが大切です。たとえば、実店舗もネットショップも運営している企業が実店舗型を選んでしまうと、ネットショップでシステムがうまく機能しないといったことになりかねません。
それでは、ポイントシステムを最大限活かすことは難しいでしょう。
以下、3つのタイプについて解説します。ぜひ参考にしてください。
実店舗型
実店舗型は、飲食店や雑貨店、サロンなど、個人経営店や小規模チェーン店などに適しているシステムです。
サービスを提供する会社によって異なりますが、以下のような機能があります。
- ポイント付与や利用をスマホアプリやサイトでデジタル管理できる
- 紙やプラスチックなどの物理的なカードも発行できる
- スマホアプリやサイトと物理的なカードを連携できる
- 店舗端末で会員登録できる
実店舗の場合、店舗スタッフがお客さまに直接説明する機会が多くなることから、高機能で複雑なシステムよりも、シンプルで分かりやすいシステムを選ぶほうがよいでしょう。
お客さまとの接点が密な店舗ほど、ポイントシステム導入効果を発揮しやすく、リピーターの獲得や顧客満足度向上につながりやすくなります。
多店舗型
複数の店舗を経営する企業や大手チェーン店に適しているポイントシステムです。
複数の店舗で登録した会員の情報を、本部で一元管理できます。全店共通のキャンペーンを実施したり、エリアや店舗ごとに異なる販促イベントを展開したり、状況にあわせた効果的な戦略の実行が可能になるでしょう。
システムにより詳細は異なりますが、以下のような機能を有しているものがあります。
- 顧客管理システムとポイント管理システムを連携して管理する
- ほかのメーカーのPOS(販売時点情報管理)システムなどと連携して運用できる
- 登録したグループごとや店舗ごとに管理できる
システムによって得意なことや実現できることに違いがあります。既存システムと連携させて顧客管理に役立てたい場合は、外部連携が得意なシステムにするなど、導入の目的を明らかにして必要な機能を備えたものを選ぶことが大切です。
EC連携型
実店舗とECサイトの両方を運営していて、どちらのポイントもまとめて管理したい場合に適しているタイプです。
システムによって詳細は異なり、以下のような機能を備えているものがあります。
- 実店舗とECサイトの顧客情報を一元管理できる
- 実店舗とECサイトの相互で貯めたポイントが使える
- 会員用アプリでキャンペーンを知らせるプッシュ通知やクーポン配布などができる
- ポイントの付与や利用履歴が確認できる
システムを導入すると、実店舗とECサイトのどちらかで貯めたポイントをもう一方でも使えるようになります。「いつもはお店で購入しているけれど、貯まったポイントを使ってECサイトで何か買おう」とお客さまが思うようになるなど、相互の販売促進につながるでしょう。
独自ポイントか共通ポイントか?
ポイントシステムには「独自ポイント」と「共通ポイント」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
独自ポイント
共通ポイント
メリットや注意点を比較し、合うほうを選びましょう。
システム導入後の業務量増加にも注意
実店舗の場合、ポイントシステムを導入すると、現場で作業する店舗スタッフの業務量が増えることは避けられません。店舗スタッフの負担が大きくなりすぎないように、注意が必要です。
増える業務には以下のようなものがあります。
- ポイントサービス未加入のお客さまに登録をすすめる
- ポイント付与の手続きをする
- 貯まったポイントで特典交換をしたいとの申し出に対応する
- システムエラー発生時に対処する
通常の業務に加え、上記のような業務もこなす必要があるため、当初はスムーズな運用が難しい可能性があります。運用しやすいよう、対策を講じましょう。
たとえば、マニュアルを整備して従業員に配る、店内でもいつでも見られるところに設置する、事前に研修の時間を設けて操作に慣れておいてもらうといった対策です。
ポイントシステムの選び方
「利用者が多い」「知名度が高い」といった理由でポイントシステムを選ぶと、運営スタイルに合わずうまく活用できずに終わるおそれがあります。ポイントシステムを選ぶときは、ポイントを押さえて吟味することが大切です。
ここでは、とくに注意すべき点を5つ紹介します。
対応しているポイントの種類は多いか
共通ポイントを導入する場合は、対応しているポイントの種類が多いか、何に対応しているかを確かめましょう。
対応しているポイントが多いほうが、より利用客を取り込める可能性が高くなります。また、あまり知られていないポイントサービスより、有名なポイントサービスに対応しているほうが集客しやすいでしょう。
さらに、「物理的なカードの発行も可能か」「アプリのみか」も確認しておくことが大切です。物理的なカードの発行も可能であれば、スマートフォンを持たない層にも訴求できます。
販売を促す機能が充実しているか
システムを選ぶときは、どのような機能が搭載されているかも確認しましょう。
「ポイントを付与し利用時に調整する」機能があるだけでなく、販売や利用を促進する機能が付いているシステムを選ぶと、集客や顧客単価向上などの効果が期待できます。
たとえば、以下のような機能です。
- 来店時・ネットショップ訪問時に〇ポイントを付与する
- ランクシステムがあり、上位ランク者は還元率が高くなる
- 会員アプリにクーポンを配布できる
ただし、多機能でも使いこなせなければ無駄になる場合があります。必要な機能を見極め、選択しましょう。
管理しやすくなる機能が充実しているか
ポイント情報や顧客情報の管理がしやすい機能が充実しているかも大切な要素です。たとえば、以下のような機能があると管理しやすいでしょう。
- ポイントの有効期限の設定機能
- 期限切れポイントの自動削除機能
- ポイントの付与・利用履歴を確認できる通帳機能
- 発行ポイント数を集計し分析するレポート機能
ポイントの有効期限は、商品購入の際に自動延長されるタイプ、年度ごとに切れるタイプ、どちらにも対応しているタイプがあります。販売戦略に応じて適したタイプを選びましょう。集計・分析機能が優れているシステムを選ぶと、マーケティング施策に活かしやすくなります。
外部のシステムと連携しやすいか
さまざまな外部システムとの連携のしやすさも、大切なチェックポイントです。店舗運営にあたって、POSシステムや管理システムを導入しているケースは多いでしょう。既存システムと連携できるポイントシステムを導入すると、より管理がしやすくなります。
独自ポイントを導入する場合、ポイント交換システムと連携できるものを選ぶとよいでしょう。ポイント交換システムとは、本来であれば自社の店舗でしか利用できないポイントを共通ポイントや電子マネーに交換できるシステムです。他店で使えないという独自ポイントのデメリットが解消し、集客力が高くなります。
サポート体制は充分か
サポート体制が整っているかどうかも、確かめておきたいポイントです。システムを導入すると、安定稼働するまではエラーや不具合が起こることも少なくありません。また、安定して運用できるようになっても、予測しないトラブルが発生することもあるでしょう。
運用会社によってサポートの手厚さには違いがあります。無料で相談できる、専用の担当者がついて初期設定や運用支援をしてくれる、土日祝日でもサポートに対応しているなど、手厚い体制が整っているところを選ぶと安心です。
ポイントシステムを成功に導くコツ
ポイントシステムを導入しただけでは、思ったような効果を出すことは難しいでしょう。成功させるには、いくつか押さえておきたいコツがあります。
ここでは、導入したシステムにより店舗運営を成功に導くコツを紹介します。
まずはポイントシステムを知ってもらう
まずはポイントサ-ビスを始めたことを、お客さまに知ってもらうことが必要です。
レジに来たお客さまに積極的に案内をしたり、ポイントサービスを始めたことを伝えるポスターを店内に掲示したりして、周知に努めましょう。
ポイントを貯めやすく使いやすくなる工夫を
ポイントサービスを利用してもらうためには、貯めやすく使いやすい工夫をすることが大切です。
「100円ごとに1ポイント」「来店時には10ポイントのボーナスポイント」など貯まりやすい設計にしましょう。貯めたポイントは、繁雑な手続きなしで使えるようにすることも重要です。
ポイントを使いたくなる魅力を訴求する
「ポイントを貯めて良かった」と思われるような魅力づけをすることも大切です。
「500ポイントで店内の人気商品と交換できる」「期間限定でお得な特典を用意する」など、ポイントを活用したくなる工夫をしましょう。
まとめ
ポイントシステムとは、企業や店舗が提供するポイントサービスを管理するシステムを指します。お客さまの利用にあわせてポイントを付与できるほか、会員情報や購買履歴などを一元的に管理することも可能です。また、集客効果や販売促進効果が高まるなど、さまざまなメリットがあります。
多くの会社がポイントシステムを提供しており、特徴はさまざまです。搭載されている機能や外部システムとの連携のしやすさ、サポートの充実度などを考慮し、自社に合ったものを選びましょう。
ポイントシステムをうまく活用し、あなたのビジネスをぜひ成功に繋げてくださいね!