資金繰りに悩む中小企業にとって、迅速かつ柔軟な資金調達手段を確保することは重要です。近年、融資以外の方法として「ファクタリング」が注目されています。
本記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから、種類、融資との違い、メリット・デメリットまで詳しく解説し、どのような企業に適しているかを紹介します。
ファクタリングとは?|債権の買い取り
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(取引先への未回収の売上)を、ファクタリング会社が買い取ることで、早期に現金化する資金調達方法です。
銀行融資のような借入ではないため、返済義務がなく、資金繰りの迅速な改善が期待できます。また、売掛先の信用が重視されるため、企業の財務状況が厳しくても利用しやすいことも特徴です。
ファクタリングは利用目的によって、主に5つの種類に分けられます。以下では、ファクタリングの仕組みや種類について解説します。
ファクタリングの仕組みとは
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、代金を早期に受け取ることで資金調達する仕組みです。
通常、商品やサービスを提供した後、取引先からの入金までには1〜3か月ほどの時間差があります。その間の資金不足を補う手段として、ファクタリングが利用されます。
ファクタリングを利用する際の基本的な流れは以下のとおりです。
- 企業が売掛債権をファクタリング会社に提示し、見積りを取る
- ファクタリング会社が売掛先の信用力などを審査する
- 審査に通過すれば、債権額から手数料を差し引いた金額が企業に支払われる
- 取引先からの入金は、ファクタリング会社が受け取る
なお、ファクタリングには主に「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」の仕組みがあります。
2者間ファクタリングでは、債権の売却が売掛先に通知されないため、取引関係を維持しながら資金調達が可能です。ただし、ファクタリング会社にとってはリスクが高いため、手数料も割高になる傾向があります。
一方、3者間ファクタリングでは、債権譲渡の事実が売掛先に通知され、債権の支払先がファクタリング会社に変更されます。手続きに手間はかかりますが、手数料が比較的安く抑えられ、条件も有利になることがメリットです。ただし、売掛先への通知や承諾が必要になるため、売掛先からの理解を得られるかどうかが課題になります。
このように、ファクタリングは取引の信用を活用して早期に資金化する仕組みであり、企業のキャッシュフローを柔軟に支える手段として注目されています。
ファクタリングの種類とは
ファクタリングには、利用目的や取引形態に応じていくつかの種類があります。ここでは、代表的な5つのタイプをご紹介します。
1. 買取型ファクタリング
もっとも一般的な形式で、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた金額を即時に支払います。資金化のスピードが速く、資金繰り改善に適しています。
2. 保証型ファクタリング
売掛先が倒産・未払いとなった場合でも、一定の範囲でファクタリング会社が代金を保証してくれる仕組みです。取引リスクの回避を目的とした活用に向いています。
3. 一括型ファクタリング
支払手続きをよりスムーズにする目的で導入されることが多く、従来の手形取引を発展させた金融サービスです。他のファクタリングとは異なり、売掛先が主体的に利用を決定します。
4. 国際型ファクタリング
国際間での取引における売掛債権を対象とするもので、信用調査や債権回収までをカバーする仕組みです。輸出入ビジネスにおける未回収リスクを抑えられるため、グローバル企業に適しています。
5. 医療型ファクタリング
診療報酬や介護報酬など、国や自治体から支払われる債権を対象としたファクタリングです。入金までの時間差が大きい医療・介護業界において、安定的な運転資金確保の手段となります。
このように、ファクタリングは業種や事業規模に応じて適切な種類を選ぶことで、より効果的に活用できます。
融資との違い
ファクタリングは「債権の売却」であり、融資とは根本的に異なる資金調達手段です。両者にはさまざまな違いがあり、企業の状況や目的によって使い分けが必要です。
まず大きな違いは、返済義務の有無です。融資は借入であるため、利息を含めた返済が必要です。一方、ファクタリングは売掛債権を売却する形式であり、企業に返済義務は発生しません。そのため、バランスシート上も負債として扱われず、信用への影響を抑えることが可能です。
次に、資金調達のスピードにも違いがあります。銀行融資では、審査や書類準備、稟議などに時間がかかり、資金化までに数週間かかることも珍しくありません。これに対し、ファクタリングは最短即日での入金が可能な場合もあり、急な資金ニーズに対応できます。
保証人や担保の有無も大きな差です。融資では、保証人や不動産担保が求められることが一般的ですが、ファクタリングではそれらは原則不要です。審査の対象も異なり、融資では申請企業の財務状況や信用スコアが重視されるのに対し、ファクタリングでは売掛先企業の信用力が審査のポイントになります。
つまり、売掛先が安定した大企業であれば、自社の業績が厳しい状況でも資金調達が可能なのがファクタリングの強みです。一方、融資のほうが調達可能な金額が大きく、長期的な資金ニーズへの対応には向いています。
このように、ファクタリングと融資は目的や条件によって適切に選択することが重要です。短期の資金繰りにはファクタリング、成長資金や設備投資には融資というように使い分けるのが効果的です。
ファクタリング利用のメリット
ファクタリングは、売掛債権を活用して迅速に資金を調達できる手段として、多くの企業に活用されています。融資と異なり、返済義務がなく、財務状況が厳しい場合でも利用しやすい点が大きな特長です。
ここでは、ファクタリングの主なメリットを3つの観点から紹介します。
迅速に資金調達ができる
ファクタリング最大のメリットは、資金調達までのスピードです。審査は主に売掛先の信用力に基づくため、自社の業績や信用に問題があっても利用しやすいのが特徴です。
申し込みから最短で即日、遅くとも数営業日以内に現金化されるケースが多く、急な資金ニーズや突発的な支払いにも迅速に対応可能です。資金繰りの予測が難しい中小企業にとっては、強力な資金調達手段となります。
資金繰りが厳しくても資金調達可能
ファクタリングは、売掛先の信用力を重視するため、自社の財務状況が悪化していたり赤字であったりしても利用できる可能性があります。従来の銀行融資では審査通過が困難なケースでも、安定した売掛債権さえあれば資金調達が可能です。
特に創業間もない企業や、コロナ禍などで一時的に資金繰りが厳しくなっている企業にとって、有効な手段となります。
貸倒リスクが少ない
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却することで資金化するため、債権回収に伴う貸倒リスクを企業側が負う必要がありません。
特に3者間ファクタリングでは、売掛先からファクタリング会社へ直接支払いがおこなわれるため、未回収リスクがさらに軽減されます。
資金調達と同時にリスク分散も図れる点は、経営の安定性向上にもつながる大きなメリットです。
ファクタリング利用のデメリット
ファクタリングは迅速な資金調達が可能で便利な手段ですが、注意すべき点もあります。手数料の高さや、取引先に知られることで信用に影響する可能性があるなど、利用にあたっては慎重な判断が必要です。
ここでは、主なデメリットを2点紹介します。
手数料が高くなる場合がある
ファクタリングは、売掛債権の額面から手数料を差し引いて資金化する仕組みのため、調達コストが相対的に高くなる可能性があります。
特に、2者間ファクタリングは売掛先への通知がない分、ファクタリング会社がリスクを負うため、手数料が5〜10%以上になることが多いでしょう。繰り返し利用すると、利益を圧迫する要因となるため、費用対効果の見極めが重要です。
売掛先からの信用が下がる場合がある
3者間ファクタリングでは、売掛債権の譲渡について売掛先に通知されるため、「資金繰りが厳しいのではないか」といった印象を与える可能性があります。そのため、売掛先との信頼関係に影響をおよぼすケースもあることを考慮しなければなりません。
また、債権譲渡に同意を得られなければ、利用自体が難しくなることもあるため、導入前に関係性やリスクを慎重に検討することが重要です。
資金繰りの根本の改善にはなっていない
ファクタリングは一時的な資金不足を補うには有効な手段ですが、根本的な資金繰りの改善策とはいえません。売掛債権を前倒しで現金化する仕組みであるため、継続的な資金不足を解消することはできない点に注意が必要です。
長期的に安定した経営を目指すには、売上アップや利益率の改善、業務の効率化といった抜本的な改革が欠かせません。
たとえば、「STORES 予約」や「STORES レジ」などのサービスを活用することで、業務の自動化や顧客管理の効率化が実現できます。さらに、ネットショップやキャッシュレス対応を強化することで、あらたな売上チャネルを確保し、健全なキャッシュフローの構築につなげることも可能です。
一時的な資金調達に頼るだけでなく、中長期的な視点で運営を見直すことが重要です。
STORES (ストアーズ)は、資金繰りの改善を支援するサービスを提供しています。
「STORES ビジネスあと払い」
まとめ
ファクタリングは、迅速かつ柔軟に資金を確保できる手段として、多くの中小企業に活用されています。融資とは異なり、返済義務がなく、信用力に不安がある企業でも利用しやすい点が魅力です。
一方で、手数料や信用への影響など注意すべき点も存在します。短期的な資金繰りの改善には有効ですが、持続的な経営の安定を目指すには、業務効率化や売上拡大など、根本的な課題解決に取り組むことが欠かせません。
そのため、状況に応じた正しい選択が重要になるでしょう。
※本記事の内容は情報提供のみを目的としており、アドバイスを提供するものではありません。記事内容の正確性や妥当性について細心の注意を払っておりますが、それらを保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。ご了承ください。また、記載の制度等は変更される場合がありますので、最新情報をご確認ください。