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更新日
2025-09-22

行動経済学とは?有名理論やマーケティングとの関係について解説

STORES マガジン編集部
行動経済学とは?有名理論やマーケティングとの関係について解説

行動経済学は「人間は非合理的な選択をする場合もある」ことを前提に、研究されている学問です。

行動経済学とはどのような学問か、ビジネスで活用するメリットは何か、注意点はあるのか、本記事で詳しく解説します。

行動経済学とは|経済現象を分析する学問

行動経済学とは、経済学と心理学の考え方を組み合わせた学問です。「人間は必ずしも合理的な選択をとらない」ことを前提としており、その結果が人々の暮らしにどのような影響を与えるのかを研究しています。

たとえば、
「必要ではないのに『今だけ半額キャンペーン中』などの宣伝文句につられて購入してしまう」
「ダイエットの重要性は分かっているが、ついスイーツを食べてしまう」

といった、合理的ではない選択・判断をする人間の行動を行動経済学は研究対象にしています。

経済学との違い

経済学とは「人間は合理的な選択をする」ことを前提とし、経済の仕組みを研究する学問です。

しかし、人間は必ずしも合理的な選択をするとは限りません。上述したとおり「自分へのご褒美に」とダイエット中にもかかわらずスイーツを食べたり、節約中であるのに不必要なブランド品を購入したりと、合理的でない判断を下す場合があります。

そこで行動経済学では、さまざまな学問の影響を受けて「人間の心理」にも注目した研究を行っています。

行動経済学と他学問との関係

行動経済学は、下記のような他の学問から影響を受けて成り立っています。

  • 認知心理学
  • 社会心理学
  • 進化心理学

行動経済学では「人間の心理や感情」も研究対象となるため、心理学のさまざまな知見の影響を受けています。経済学の考え方だけでは説明がつかなかった非合理的な意思決定の理由を、心理学の観点から研究しているのです。

経済学と心理学、2つの学問の知見を活かし、実際の経済活動の本質に迫っていきます。

マーケティングと行動経済学の関係性

行動経済学は「実際の人間の心理や行動」を前提としているため、企業活動、特にマーケティング分野での応用が進んでいます。

たとえば、ネットショップを運営している企業の場合、利用者の属性(年齢・性別・居住地など)や利用しているデバイス(スマホやタブレット、パソコンなど)を分析しています。このときに行動経済学の考え方を活かして、利用者の利便性が高まり購買行動につながりやすくなるよう、サービス設計に役立てることが可能です。

また、ソーシャルゲーム(通称ソシャゲ)でしばしば話題になる「ガチャ(お金を払って有料アイテムをランダムで入手できる仕組み)」も、行動経済学の観点から説明できます。

「ちょっとだけならお金を払ってガチャを回しても大丈夫」と一度でもユーザーがお金を支払うと、つい財布の紐が緩み、気づいたら多額のお金を支払っているケースもあります。これは「サンクコスト効果」と呼ばれるもので「いまここでガチャを回すのをやめたらもったいない」という心理が働くのです。

こうして、本来であれば「お金を支払ってガチャを回すことをやめる」ことが合理的には正しいにもかかわらず、「今まで支払ったお金が無駄になるから」とガチャを回し続けてお金を失ってしまう人も少なくありません。

行動経済学の有名理論

行動経済学には、マーケティングなど企業活動に役立つ有名な理論があります。ここでは、主な6つの理論についてご紹介します。

  1. ハロー効果
  2. サンクコスト効果
  3. プロスペクト理論
  4. アンカリング効果
  5. 認知的不協和
  6. 現在志向バイアス

ひとつずつ、くわしく解説します。

①ハロー効果

ハロー効果とは、対象の特徴や印象が物事を判断する際に影響を与える心理現象のことを指します。

「〇〇大学を卒業しているなら、きっと仕事でも活躍してくれるはずだ」
「見た目がよくて話もうまいから、きっと多くの人から好かれているはずだ」
「有名人がおすすめしている商品(サービス)だから間違いないはずだ」

このように感じるのも、ハロー効果による影響です。ハロー効果は、心理学における「認知バイアス」のひとつに分類されます。

なおハロー(halo)とは「後光」「円光」など、頭の後ろからさす光のことです。挨拶の「hello」とは意味が異なります。ビジネスシーンで誤った説明をしてしまわないよう、覚えておきましょう。

②サンクコスト効果

サンクコスト(sunk cost)効果とは、ある物事に投じたお金や時間が無駄になることを「もったいない」と感じ、さらにコストを投じてしまう心理にかかわる理論です。。

sunkは「沈んだ(≒失った)」という意味の言葉で「埋没費用」ともいわれます。

「今までソシャゲのガチャにお金を支払ってきたから、今さら辞めるのはもったいなくてできない」
「儲かっていない事業だが、今まで投じた設備投資費用が無駄になるのが怖くてやめられない」

このように、合理的に考えればコストをかけるのをやめることがお得であるにもかかわらず、お金を支払い続けてしまう心理のことをサンクコスト効果と呼びます。

企業にとっては収益を得るうえで役立つ理論ですが、商品やサービスが倫理的な問題を招いてしまわないか、精査が必要です。

③プロスペクト理論

プロスペクト理論とは「人間は損失を回避しようとする傾向があり、状況によって判断が変わる」といった理論です。

経済学では「人間は合理的な選択をおこなう」ことを前提としていますが、プロスペクト理論では「場合によっては感情や直感に基づいた判断をおこなうこともある」ことを前提としています。

「今だけ半額セール中です」
「あなただけの特別なオファーです」

このような広告を目にしたときに「いま購入した方がお得だ」と思い込んでしまい、つい衝動買いをしてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。

実は、冷静に考えれば不要であるはずの商品やサービスをつい契約してしまう行動を取ってしまうことも、プロスペクト理論により説明できます。

④アンカリング効果

アンカリング(Anchoring)とは「船の錨(いかり)を下ろす」ことを指す言葉です。アンカリング効果では、船の錨を下ろすことに例えて「最初に提示された情報が物事の判断基準として残り、意思決定に大きな影響を与える」ことを表します。

たとえば、通常価格は10万円の商品を「今だけ5万円」とセールを行った場合、消費者は「安い」と感じるはずです。このとき、その商品に5万円分の価値があるのかどうかは関係がありません。最初に提示された「10万円」が基準となるのです。

ただし、常に10万円の商品を5万円として販売している場合、不当表示に該当する恐れがあります。企業側としては、行動経済学だけを考えるのではなく、セールス方法に法的な問題がないか精査することが求められます。

参照元:消費者庁「二重価格表示」(2025年7月)

⑤認知的不協和

認知的不調和とは、矛盾する自分の考えや行動を、別の考え方によって正当化しようとする心理のことです。

「ダイエット中だけれど、定期的に甘いものを食べなければストレスで余計に太ってしまうはずだ」
「タバコが体に悪いことは理解しているが、自分に問題が起こることはないだろう」

このような自分の行動を正当化してしまう心理のことを認知的不協和と呼びます。

企業活動においては「甘いのに低カロリー」「小型なのにパワフル」など、矛盾する言葉をあえてキャッチコピーに使うといったふうに活用することが多いです。

認知的不協和をうまく活用することで消費者の注意を引き、売上アップにつながる可能性があります。

⑥現在志向バイアス

現在志向バイアスとは、将来の大きな利益よりも目の前の小さな利益を優先させてしまう心理のことです。現在志向バイアスを説明するうえで有名なエピソードのひとつに、心理学者のウォルター・ミシェル氏が行った「マシュマロ実験」が挙げられます。

ウォルター氏は、1人ずつ子どもにマシュマロを置いてある部屋で待機させ「15分間マシュマロを食べずに待っていたら、マシュマロを2個あげる」と告げて、部屋を去ります。その後の子どもたちを観察した結果、3分の2の子どもがマシュマロを食べていました。

このエピソードから、人間は目の前の利益(ひとつのマシュマロを食べること)を優先してしまう傾向があることが分かります。

行動経済学を活用するメリット

行動経済学は、私生活はもちろんビジネスシーンでも活用できる学問です。具体的には下記のようなメリットがあります。

  • マーケティングに応用できる
  • 自己実現・自己表現に応用できる

どういうことか、ここでくわしく解説します。

マーケティングに応用できる

行動経済学を活用することで、より効果的なマーケティング活動を行いやすくなります。なぜなら、消費者がなぜその商品・サービスを購入したのか、どうすれば「購入したい」といった気持ちを高めることができるのか、分析しやすくなるからです。

ソーシャルゲームのガチャを例に考えてみましょう。

「サンクコスト効果を狙って初回は無料でガチャを回せるようにしたら、売上が伸びた」
「ハロー効果を狙って有名人を広告に起用したら、想定以上に新規ユーザーが増えた」

このように、行動経済学の理論をもとに効果的なマーケティング戦略を立案しやすくなります。ソーシャルゲームのガチャに限らず、ネットショップ運営など他のビジネスでも行動経済学の理論はマーケティング戦略を立てるうえで役立ちます。

マーケティングの成果がでているかどうか、改善点はあるかどうか把握・分析するなら、ツールを活用することをおすすめします。マーケティングツールをうまく活用することで、行動経済学にもとづいた販売促進活動をより効果的に運用・改善しやすくなります。

STORES データ分析 なら、ネットショップや店舗の販売データや会員データなどをさまざまな軸で分析することが可能です。ぜひチェックしてみてください。

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自己表現に応用できる

行動経済学は自己表現をおこなううえでも役立ちます。なぜなら、行動経済学の考え方や理論を把握するだけで、自分の行動をよい方向に変えやすくなるからです。

たとえば実現したいキャリアを持っていたとしても「今のままでも安定しているからいいや」と考えるのは、怠け癖ではなく現在志向バイアスが強くなっている影響であると自己理解を深められます。

こうした人間の特性を理解することで、自己実現できるように環境や仕組みを見直しやすくなるはずです。

行動経済学活用時の注意点

最後に、行動経済学をビジネスで活用する際に押さえておきたい注意点をご紹介します。

  • 理論を優先しすぎない
  • 長期的に観察する

ビジネスでうまく行動経済学を活かすためにも、チェックしておきましょう。ひとつずつ、くわしく解説します。

理論を優先しすぎない

行動経済学は有用な学問ですが、あくまで理論です。必ずしもすべての状況に当てはまる法則ではありません。行動経済学にもとづいたマーケティング活動を実施しても、ビジネスで成果につながるかどうかは不透明です。

実際に施策を試してみて効果があるか、より効果を得るにはどうしたらよいのか、常にPDCAを回すことが重要です。また、行動経済学の理論を重視するあまり、モラルやコンプライアンスを軽視したビジネスをおこなっていると、社会的な制裁を受けるリスクも増します。

行動経済学に頼り過ぎないよう、現場にも目を向けることが重要です。

長期的に観察する

行動経済学は、即効性のある特効薬ではありません。ビジネスの場合、行動経済学の考え方を商品やサービスの設計に落とし込んで売り出すのに時間がかかるのはもちろん、ローンチしても、必ずしもうまくいくとは限りません。

行動経済学の理論を活かしてセールスやキャンペーン活動を行っていくことは、企業活動において役立ちます。しかし「すぐに効果が出てこないから行動経済学の考え方は当てにならない」と、決めつけるのは早計です。

継続的に数字を観察し、施策がうまくいったのかどうか、今後さらに成果を上げるにはどうすればよいか、冷静に分析することが大切です。

まとめ

本記事では行動経済学について、理論の概要やビジネスで活用するメリットなどを紹介しました。行動経済学は人間の感情や直感など、非合理的な面にも注目した経済学です。うまく活用すれば、マーケティングの効果が上がったり売上向上につながったりします。

ただし、行動経済学はあくまで理論です。どのような場面でも必ず通用するわけではないことを意識することが大切です。

本記事で紹介した行動経済学の理論を参考に、自社の企業活動で役立てられないか検討してみましょう。

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