美容室を経営する人の中には「無断キャンセルが多くて困っている」「キャンセル料を請求しても大丈夫だろうか」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、美容室がキャンセル料を請求できる根拠や注意点、予約キャンセルを防止する方法などを解説します。
美容院はキャンセル料を請求できるのか
美容室は、予約をキャンセルしたお客さまに対してキャンセル料を請求できます。
一般的に美容院の予約は「契約」に相当するとされ、民法第四百十五条の「債務不履行による損害賠償」を根拠に、キャンセル料を請求できます。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「民法」第四百十五条(2025年5月時点)
キャンセル料を決める際の注意点
キャンセル料を設定する際には、いくつか注意しておきたい点があります。キャンセル料を請求する過程でトラブルが発生しないよう、目をとおしておきましょう。
キャンセル料を設定することはデメリットもある
キャンセル料を設定すると、お客さまからの予約を獲得しにくくなるリスクがあります。
たとえば初めてのお客さまがあなたの美容室を「良さそうだな」と思い予約しようと考えていても、「もし急用が発生したら、キャンセル料を請求される可能性がある」と不安を感じ、予約をためらってしまいかねません。
請求額には上限がある
設定できるキャンセル料には上限があります。具体的には、美容院側が被った金額以上の金額は設定できません。
消費者契約法の第九条では、事業者が請求できる金額について、発生する損害の額を超えたキャンセル料の請求はできないといった趣旨の記載があります。
過大なキャンセル料を請求してしまうと「無効」と判断されてしまう場合もあるため、金額が適正かどうか事前に確認しておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「消費者契約法」(2025年5月時点)
キャンセルポリシーを定める必要がある
キャンセル料を設定するには、事前にキャンセルポリシーを設定し、それをお客さまへ開示する必要があります。
キャンセルポリシーを設定していない、またはお客さまへ開示していない場合、たとえ予約をキャンセルされたとしても、キャンセル料の請求ができません。
予約を受け付ける際に、ウェブサイト上でキャンセルポリシーについて記載する、予約確認メールに記載するなど、お客さまがキャンセルポリシーを確認しやすい状態にしましょう。
キャンセル料が免責される場合もある
お客さまのキャンセル理由によっては、キャンセル料の請求が認められない場合もあります。
民法第四百十五条「債務不履行による損害賠償」では、「社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」の場合には請求ができないと記されています。
参考:e-Gov法令検索「民法」第四百十五条(2025年5月時点)
具体的には、自然災害や身内に不幸が発生した場合などが考えられます。明らかに予約した人の責任でない理由でキャンセルをおこなった場合は、キャンセル料を請求できません。
美容室のキャンセル料の決め方とは
キャンセル料の具体的な金額を決める際には、キャンセルされたことによって美容室が失う利益をもとに考える方法が一般的です。
たとえば「本来得られるはずだった粗利」×「キャンセルされた日時にほかの人が来店しない確率」で計算する方法があります。粗利(あらり)とは、売上から原価(仕入れ費用など)を差し引いた金額のことです。粗利には、スタッフの人件費や家賃、光熱費などは含まれません。
美容室業界では「前日のキャンセルで料金の30%」「当日キャンセルで料金の50%」をキャンセル料として設定している店舗が多く見受けられます。ただしこれらの料金・割合はあくまで目安であり、法律の範囲内であれば美容室側が自由に設定して構いません。
キャンセルポリシーを書く際のポイント
キャンセルポリシーを作成する際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
キャンセル可能期間は明確に書く
いつまでなら無料でキャンセルできるか、期限を明確にキャンセルポリシーへ記載することが大切です。
「3日前までであれば無料でキャンセルできる」など、キャンセル可能期間をポリシーに明記しましょう。これにより、キャンセルを巡ってお客さまとのトラブルになるリスクを低減できます。
キャンセル料を明確に書く
キャンセル料が発生する条件と金額を、分かりやすく記載することも重要です。
美容室業界では「前日のキャンセルで30%」「当日のキャンセルで50%」「無断キャンセルで100%」といったように、段階的に記載するのが一般的です。
連絡方法を記載する
お客さまが予約をキャンセルしたり遅刻したりする旨をスムーズに店舗に連絡できるよう、緊急連絡先を記載することも大切です。
電話番号はもちろん、メールアドレスやLINEの連絡先を記載するなど、美容室ごとの状況にあわせた適切な連絡手段を記載しましょう。
サロン側からお断りするケースについても触れる
お客さまの都合だけでなく、美容室側の判断で施術を断る場合についても明記しておきましょう。
たとえば発熱などの症状がある、施術に影響するような病気やけがをしている、酔っている場合などは、安全に施術をおこなうのが難しいはずです。このような場合どのように対応するのか、キャンセル料は発生するのか、明記しましょう。
開示するのを忘れずに
もっとも大切なのが、作成したキャンセルポリシーをお客さまへ開示することです。どれだけキャンセルポリシーを作り込んでも、適切にお客さまへ開示できていなければ、キャンセル料を請求できません。
予約ページや確認画面、予約完了メール、店内での掲示など、お客さまの目に留まる場所にキャンセルポリシーを掲示しましょう。
キャンセルポリシーの例文
以下は美容院のキャンセルポリシーの例文です。文面を参考にしていただき、キャンセルポリシーの設定に役立ててください。
いつも(サロン名)をご愛顧いただきありがとうございます。
当サロンは、お客さま一人ひとりに丁寧なサービスを提供するため、完全予約制にて営業をおこなっております。つきましては、ご予約の変更やキャンセルを希望される場合は、以下の点にご協力いただきますようお願い申し上げます。
【予約の変更・キャンセルのご連絡について】
都合が悪くなった場合は、ご予約の2日前の営業時間内(20時まで)に、お電話にてご連絡ください。
電話番号:(サロンの電話番号を記載する)
【キャンセル料について】
ご予約の2日前までにキャンセルのご連絡がなかった場合、または連絡なくご来店いただけなかった場合は、たいへん恐縮ですが以下のキャンセル料を請求させていただきます。
前日のキャンセル:予約料金の30%
当日のキャンセル:予約料金の50%
連絡なくご来店いただけなかった場合:予約料金の100%
【遅刻について】
やむを得ない事情でご予約自体に遅れる場合は、速やかにお電話にてご連絡ください。状況によっては施術時間の短縮、もしくは施術をお受けできない可能性がございます。その場合も、上記の規定に基づきキャンセル料金が発生いたしますので、あらかじめご了承ください。
【例外事項】
自然災害や悪天候、そのほかやむを得ない事情があると判断できる事情によるキャンセルの場合は、キャンセル料をいただきません。
泥酔している、もしくは発熱しているお客さまについては、感染症の理由から施術をお断りさせていただきます。泥酔している場合は予約料金の50%を頂戴いたします。発熱によるキャンセルの場合、キャンセル料金はいただきません。
予約キャンセルを予防するために
キャンセル料を設定することは大切ですが、そもそもキャンセル自体を予防する取り組みをおこなうことも大切です。具体的にどのようなことができるのか紹介します。
お客さまが連絡を取りやすくする
お客さまが予約日時を変更したりキャンセルしたりしたい場合に、すぐ店舗に連絡できるよう配慮することが大切です。
予約完了メールに緊急連絡先を記載したり、予約を受けた際に緊急連絡先を案内したりしましょう。予約管理システムを導入して、システム上で手軽にスケジュール変更やキャンセルをおこなえるような仕組みを導入するのもおすすめです。
コミュニケーションを継続的に取る
お客さまと継続的にコミュニケーションを取ることも、急な予約のキャンセルを予防する上で役立ちます。SNSやLINEでつながり、継続的に情報発信をおこなったりお客さまからの相談に対応したりするなど、日ごろからコミュニケーションを取ることを意識しましょう。
普段から連絡を取っている相手であれば「面倒だから連絡せずに予約をキャンセルしよう」とはなりにくくなるはずです。
レジの決済やネットショップなどの予約・会員管理、データ活用を支援するサービス「STORES 予約(ストアーズ予約)」は、自動DM配信やSMS配信といった機能を活用することで、効率的にお客さまとコミュニケーションを取れる、おすすめのサービスです。
リマインダーを送る
予約の1週間前や前日に、リマインダーメールを送るのもおすすめです。リマインダーを送ることで、予約忘れや勘違いによるキャンセルを防ぎやすくなります。
「STORES 予約」を導入すれば、予約通知メールを自動配信することができます。さらに文面のカスタマイズも可能です。お客さまの予約忘れによるキャンセルを防ぎたいと考えているなら、ぜひ導入をご検討ください。
キャンセル料を徴収する3つの方法
キャンセルが発生した場合、具体的にどうお客さまからキャンセル料を徴収するのか紹介します。
次回来店時に支払ってもらう
次回来店していただいた際に、前回のキャンセル料を支払っていただく方法です。
振込先を伝える
キャンセル料の振込先となる銀行口座を伝えて、振り込んでいただく方法です。
キャンセル料回収代行サービスを活用する
お客さまのキャンセル料金を回収する代行サービスがあるため、活用を検討するのもよいでしょう。
まとめ
本記事では美容室のキャンセル料について、料金の設定方法や注意点、直前のキャンセルを減らす方法などを紹介しました。
キャンセルポリシーの明示や法律の範囲内でのキャンセル料の設定が求められるなど、注意すべき点を理解しておきましょう。そもそもキャンセルが発生しないよう、普段からお客さまとの接点を持ったりリマインダーを活用したりすることも大切です。