QRコード決済を実際に使ったことがなくても、PayPayなどの名前は聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
QRコード決済はキャッシュレス決済の一種ですが、クレジットカード決済などと比べて、具体的にどのようなメリットがあるのかは、あまり知られていないかもしれません。
この記事では、QRコード決済とはどのようなものか、仕組みやメリット・デメリットを解説します。
関連ページ:【実店舗向け】キャッシュレス決済の種類やメリット・デメリット、導入費用について徹底解説!
※「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの商標または登録商標です
QRコード決済(バーコード決済)とは
QRコード決済とは、キャッシュレス決済の手法のひとつで、QRコードやバーコードを読み取ることで代金の支払いができる決済方法です。
ユーザーのスマートフォンで表示させたコードを店舗側が読み取る「ストアスキャン方式」と、店頭に掲示されているQRコードをユーザーのスマートフォンで読み取る「ユーザースキャン方式」の2種類があります。
QRコード決済の場合、ユーザー側はスマートフォンにアプリをインストールするだけで済みます。また、ユーザースキャン方式の場合は、店舗側の導入もQRコードの掲示だけで済み、特別な機器を必要としません。キャッシュレス決済のなかでも簡単に導入できるのが特徴です。
QRコード決済の仕組み
QRコード決済は、スマホに表示されたQRコードを読み取ることで支払いをおこなう仕組みです。QRコードはいわばバーコードの発展形で、1994年に日本の会社であるデンソーウェーブが開発し、2000年に国際規格として認められました。
情報を縦と横の2方向で記録できることから、横だけのバーコードに比べて大容量のデータが扱えるのが大きな特徴です。また、どの角度からも情報を読み取ることができます。
セキュリティの観点から、QRコードに銀行口座番号やクレジットカード番号などの情報が含まれることはありません。決済アプリ側がユーザー情報を管理し、安全に使用できるようにしています。
QRコード決済普及の背景
QRコード決済が普及し始めた背景には、以下のような要因が考えられます。
- 政府が大々的にキャッシュレス推進政策を進め、キャンペーンを展開
- コロナ禍により、現金払いからキャッシュレス決済を選択する人が増加
- スマートフォンの普及
- 決済サービスの充実
もともと、日本は主要国と比べて現金決済を選択する人が多く、キャッシュレス決済はあまり利用されていませんでした。そこで、普及を目的として政府がキャッシュレス・消費者還元事業を推し進めました。2019年には、キャッシュレス決済を利用するとポイント還元が受けられる政策を展開しています(※2)。
2020年に新型コロナウィルスが世界中に蔓延したことをきっかけに、現金受け渡しによる接触を避ける動きが広まります。QRコード決済は店員と消費者の直接の接触を避けられることから、利用者が一気に増加しました。
上記の事情に加え、スマホが一般に普及して多くの人が所有するようになったこと、数多くのQRコード決済サービスが登場して使いやすくなったことも関係しているでしょう。
参考:経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業」(2025年3月時点)
関連ページ:QRコード決済の統一規格「JPQR」とは?導入するメリット・デメリットや費用
QRコード決済の種類・やり方
QRコード決済は、2つに分類できます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、ショップの状態や客層などにマッチしているほうを選びましょう。
ストアスキャン方式
ストアスキャン方式は、コード支払いとも呼ばれ、具体的には「ユーザー提示型QRコード決済」として分類されます。決済の流れについて解説します。
- ユーザーがスマホなどのモバイル端末にQRコードを表示させ、店舗スタッフに提示する
- 店舗にある専用の決済端末でコードを読み取る
- 店舗スタッフが決済アプリの完了画面を確認する
店舗側からすると、支払いフローはクレジットカード決済と同じようなイメージです。提示されるものがQRコードかクレジットカードかの違いがあるだけと言えます。ただし、店舗側はQRコードを読み取る端末を用意する必要になる場合があります。
ユーザーにとっては、端末にQRコードを提示するだけでよいため負担が軽い方法です。
ユーザースキャン方式
ユーザースキャン方式は読み取り支払いとも呼ばれ、以下のような流れで決済します。
- 店舗側が店舗情報が登録されたQRコードを用意する
- ユーザーが端末の決済アプリでQRコードを読み取る
- ユーザーが利用金額を入力し、店舗スタッフが誤りがないかを十分に確認する
- ユーザーが決済アプリで「支払う」などをタップし、スタッフが決済完了画面を確認する
店舗からすると、コードを提示するだけでよいため初期費用や手間がほとんどかかりません。
一方、ユーザーからすると買い物の合計金額を決済アプリに入力する必要があり、手間がかかります。店舗側は入力ミスがないか十分に確認する必要があり、レジが進まずに混雑する可能性もあるでしょう。
関連ページ:QRコード決済とは?仕組みやメリット・デメリット、おすすめサービスを紹介!
QRコード決済の支払い方法は大きく分けて3種類ある
前払い
前払い式は、事前に銀行口座やATM、クレジットカードなどからアプリへお金をチャージする方式です。チャージした分しか使えないため、使いすぎを防げます。なかには、一定残高を下回ると自動でチャージしてくれるものもあります。
即時払い
即時払いは、銀行口座とアプリが連携し、決済が完了するとただちに口座から代金が引き落とされるものです。前払いと同様に口座残高分しか使えないため、使いすぎを防げますが、残高を把握していないと、いざというときに使えないこともあるため注意が必要です。
後払い
後払い方式は、クレジットカードとアプリを連携させ、利用代金をクレジット払いにするものです。クレジットカードの利用とほとんど変わりませんが、サインや暗証番号の必要がない点で、クレジットカードよりも手軽に利用できます。
店舗がQRコード決済を導入するメリット
①業務効率化できる
現金決済の場合、釣り銭用の現金を用意しなければなりませんし、金額を間違えることもありました。しかし、QRコード決済ではデータしかやりとりしないため、金額のミスはありませんし、用意しなければならない現金も少なくて済みます。
レジ締めも、現金だけの場合と比べて大幅に短縮できるでしょう。QRコード決済の導入で業務の効率化が実現します。
②キャッシュレス決済の利用者をユーザーにできる
QRコード決済では、サービスを提供している各社でポイント制度を設けています。そのため、ユーザーによっては特定のQRコード決済サービスを優先して使う方もおり、そうした方に向けてQRコード決済の導入をアピールすれば、自分のお店を選んでもらえる可能性が上がるでしょう。
③手数料・初期費用が安くお得に利用できる
クレジットカードや電子マネーなどでは、導入するのに読み取り端末が必要です。しかし、QRコード決済では端末は不要で、ユーザースキャン方式であれば、店頭にQRコードを掲示するだけで済み、初期費用を抑えられます。
また、手数料無料のキャンペーンもしばしばおこなわれていることから、手数料も抑えながら利用できるのもメリットです。
店舗がQRコード決済を導入するデメリット
①決済手数料が発生する
QRコード決済は、売上に対して数%の手数料が発生します。クレジットカード決済などと比べると、手数料は低めですが、もともとの利益が少ない場合などは、手数料が思わぬ負担になる可能性もあります。
②売上が反映されるまで時間がかかる
QRコード決済に限った話ではなく、キャッシュレス決済全般にいえることですが、キャッシュレス決済では売上から入金までのタイムラグが発生します。
サービスによって入金までのタイミングはさまざまです。前倒しで入金ができるものもありますが、手数料が必要な場合がほとんどです。キャッシュフローに無理が生じないような入金サイクルを選ぶようにしましょう。
③QRコードの扱いに注意が必要
QRコードを発行した後は、その取り扱いには細心の注意を払う必要があります。仮に、QRコードが他者の悪意によってすり替えられた場合、店舗にお金が支払われず、まったく別のアカウントに売上金が流れてしまう恐れがあるためです。
このようなリスクが常に潜んでいることを念頭に置き、QRコードをどの位置に設置し、どのようにアピールすべきかを事前にしっかりと入念に決めておきましょう。
QRコード決済導入時の費用やポイント
QRコード決済の導入を検討するなら、どのくらいの費用がかかるか知っておくことが必要です。自社にあったサービスを選ぶために、注意点を把握して最適なサービスを選びましょう。
決済手数料
非常に便利なQRコード決済ですが、加盟店にとって負担となるのが決済手数料です。QRコード決済がおこなわれると、1回ごとに決済手数料が発生します。
決済手数料は会社によって「売上の〇%」と決まっています。仮に売上の3%とすると、1万円の売上があったときには300円の支払いが必要です。「300円くらいなら」と思っても、重なれば大きな金額になります。
しかし、お客さまが負担する商品やサービスの価格に上乗せして請求することは禁止されているので、注意してください。なるべく決済手数料が安い決済代行会社を選ぶことがポイントです。
導入にかかる費用
導入時にかかる費用は、ユーザースキャン方式かストアスキャン方式かによって異なります。
ユーザースキャン方式であれば、導入の際の初期費用はほとんどかかりません。ユーザースキャン方式は、店舗情報を登録したQRコードを印刷して店内に掲示するだけでよく、決済事業者から無料提供されることが一般的だからです。
一方、ストアスキャン方式であれば、QRコードを読み取るための端末が必要になります。有料の事業者ばかりではなく、1台目は無償提供だったり、レンタル可能なパターンもあります。
端末の料金は事業者によってさまざまなため、事前に十分に確認しましょう。
その他、通信環境(Wi-Fiまたはモバイル回線)を整える必要があり、その準備にかかる費用も必要です。
ランニングコスト
QRコード決済を利用する場合、決済事業者によっては月額利用料などのランニングコストがかかる場合があります。また、条件によっては事業者から売上金が振り込まれる際に、振込手数料がかかることもあるでしょう。振込手数料は無料のところもあるので、十分に調べることが大切です。QRコードを読み取る専用端末をレンタルしている場合は、端末の利用手数料が発生します。
事業者によって毎月かかる費用の内訳も金額もさまざまです。プランによって異なることも少なくありません。毎月どの程度の費用が発生するのか、十分に確認しましょう。導入費用が安くても、ランニングコストが高いと負担が大きくなり、運用を続けていくのが難しくなる可能性があります。
審査に日数がかかる
審査日数がかかる点も、QRコード決済導入にあたって注意しておきたいポイントです。
QRコード決済を導入しようと思っても、申し込んですぐに利用できるようになるわけではありません。その前に、審査を受けて承認を得る必要があります。
申請から審査が完了して実際に決済できるようになるまでの日数は、QRコード提供事業者によってさまざまです。1営業日で可能なところもあれば、数週間ほどかかるところもあります。
「開店にあわせてQRコード決済の導入を済ませておきたい」など、急いで利用できるようにしたい場合もあるでしょう。利用を検討している事業者があれば、およそどの程度の日数で審査が完了するのか確かめておくことが大切です。
QRコード決済を選ぶポイント
QRコード決済を導入する際に比較したい、コストや使いやすさ、セキュリティなどの重要ポイントを解説します。
①導入コスト
QRコード決済サービスの多くは、店舗側の初期費用・月額費用が無料であることが多いです。ただし、サービスによっては端末のレンタル費や決済手数料がかかる場合があります。
また、店舗側がQRコードを読み取るストアスキャン方式の場合は、スマートフォンやタブレットなどの読み取り端末が必要になり、Wi-Fiなどの通信環境も必要です。ほかにも、POSレジと連携させるなどの場合は、別途料金がかかることもあります。
②市場シェア
より多くのユーザーがいるサービスのほうが、使われる可能性が高いため、市場シェアを意識してサービスを選ぶことも大切です。QRコード決済サービスによって、ユーザーの年齢層が変わってくるため、店舗の顧客層に合うサービスを選びましょう。
③入金サイクル
入金サイクルも、必ずチェックしておくべきポイントです。入金サイクルとは、QRコード決済事業者から店舗の口座に売上金が振り込まれるまでの期間やタイミングを指します。
QRコード決済事業者ごとに入金サイクル(日次・週次・月次など)が異なるため、複数の入金日がある場合、売掛金との照合や消込が面倒になるなど、管理の手間が増えかねません。すでに導入済みの他のキャッシュレス決済との整合性を確認することが重要です。
そのため、「入金日が選べる」「既存サービスと入金日が近い」など、自社にとって負担の少ないサービスを選ぶことも大切です。
④支払いスピード
レジの支払い作業にかかる時間も、サービスを選択する際には慎重に考慮したいポイントです。
QR決済のうち、ストアスキャン方式ではユーザーがスマホなどの端末で提示したQRコードをスタッフが読み取るだけで済みます。そのため、クレジットカード決済などとほとんどスピードは変わりません。
一方、ユーザースキャン方式では、QRコード読み取り・金額入力などのステップがあるため、オペレーション次第では現金より時間がかかる場合があります。顧客満足度にも影響を与えかねず、注意が必要です。
⑤不正対策
セキュリティ対策についても、しっかりと吟味しましょう。QRコード決済提供事業者でも、さまざまな安全対策をおこなっています。
たとえば、ユーザースキャン方式では、店内に掲示したQRコードの上に別のQRコードを貼られてしまう「ステッカー詐欺」のリスクがあります。別のQRコードが貼られた状態でユーザーが決済をすると、支払った代金は犯人の口座に流れる仕組みです。また、ユーザーが偽の決済完了画面を提示し、支払いが終わっていないのに終わったと見せかけるケースもあり得ます。
店舗側で決済通知を確認しないと不正を見抜けないことがあるため、リアルタイム通知機能や決済履歴の確認を徹底することが重要です。
また、「QRコードはよく見える場所に置く」「利用者操作は最初から見ておく」など、お店ごとに安全対策を取るようにしましょう。
おすすめのQRコード決済サービス6選
おすすめのQRコード決済サービスを6社紹介します。
PayPay
PayPayは、登録ユーザーが6,500万人以上のQRコード決済サービスです。初期費用・月額費用無料で利用できますが、売上が多い場合は有料プラン「PayPayマイストア ライトプラン」(月額1,980円)を選ぶと決済手数料が1.6%に下がります。
楽天Pay
楽天Payは、楽天ペイメント株式会社が提供するキャッシュレス決済サービスで、QRコード決済以外にもクレジットカード決済、電子マネー決済に対応しています。楽天銀行を入金先口座にすれば、手数料0円で売上の翌日に入金されるのが特徴です。
メルペイ
メルペイはフリマアプリで有名なメルカリを利用したQRコード決済サービスです。d払いと提携しており、dポイントユーザーとメルカリユーザーの両方にアプローチできるのがメリットです。
au PAY
au PAYはKDDIが提供するQRコード決済で、auユーザー以外でも利用可能です。ネットショップはもちろん、全国に広がるau PAY加盟店で使用できます。
支払い金額に応じてPontaポイントが貯まるのも魅力のひとつです。貯まったPontaポイントは、1ポイント1円相当で利用できます。
Alipay
中国でもっとも使われているECサイト、アリババが提供する決済サービスで、中国内では広く普及しています。日本を訪れる中国人観光客を取り込みたいなら、Alipayを導入するとよいでしょう。
店舗への導入にあたっては、決済代行会社やAlipay認定代理店に相談して手続きする必要があります。なお、直接アリババに申し込むことはできません。
d払い
NTTドコモが提供するQRコード決済サービスで、ドコモユーザー以外でも利用可能です。ネットショップや全国の加盟店で使え、dポイントを貯められます。貯まったポイントは1ポイント1円相当で使用可能です。
QRコード決済とその他キャッシュレス決済の比較
キャッシュレス決済には、QRコード決済のほかに、クレジットカード決済、電子マネー決済、スマホ決済があります。それぞれのメリットとデメリットをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
ユーザー側
お店側
キャッシュレス決済のなかでもQRコード決済は、ユーザー側もお店側も導入が簡単なのが大きなメリットです。
まとめ
QRコード決済は、キャッシュレス決済の一種で、導入が手軽なことがメリットです。クレジットカード決済や電子マネー決済とは異なり、利用手数料が安いといった特徴もあります。
キャッシュレス決済未導入の店舗事業者の方は、QRコード決済からキャッシュレス化をはじめてみるのはいかがでしょうか。
※2025年3月時点の情報を参考にしています。最新の情報は、各サービス会社のウェブサイトをご確認ください