CRM(Customer Relationship Management)とは、お客さまとの信頼関係構築を目的に実施するアプローチ方法、および実現に向けて使うシステムのことです。CRM上の顧客情報を活用しニーズにマッチした施策を設計・実行することで、効率的な売上アップを実現できます。
本記事では、CRMの定義や生まれた背景、代表的な機能、メリット、導入の流れなどを解説します。
CRMとは?定義と目的
CRMとは、お客さまとの関係向上を目的に実施するアプローチ方法、および実現のために使うシステムのことです。日本語では、「顧客関係管理」と訳されます。
お客さまのニーズや状態にあわせたフォロー施策を実行して信頼関係を構築し、リピーターとなってもらうことで、企業の長期的な利益向上を目指すことが目的です。
CRMが生まれた背景・経緯
CRMが生まれた背景・経緯としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 時代に合った顧客ニーズに対応するため
- 顧客満足度を上げるため
- コストの削減と仕事の効率化
時代に合った顧客ニーズに対応するため
現在は多くの業界において顧客ニーズの多様化が進んでおり、それに伴いさまざまな製品・サービスが販売されています。サブスクリプションサービスで例を挙げると、動画配信や音楽配信、ファッション、家具、飲食店など、幅広いニーズに対応できるサービスが参入しています。
このように現代のビジネスでは、多様化する顧客ニーズを把握し、ニーズにマッチしたサービスの構築およびフォローが必要です。CRMを活用すれば、さまざまなニーズを適切に把握できるようになります。
顧客満足度を上げるため
上記で解説したように、業界ではさまざまな製品・サービスが販売されています。多くの競合がいる中で自社を選んでもらうには、CRMを活用してニーズを満たすためのアプローチをおこない、顧客満足度を高めることが大切です。例えば、以下のイメージです。
- サンプルを請求したお客さまに、メールで定期的に商品情報を届ける
- メルマガ読者に特別クーポンを配布し、初回購入への意欲を高める
コストの削減と仕事の効率化
CRMを活用し、社内の顧客情報を一元管理することで、フォロー施策の設計で使う情報を必要なタイミングで抽出できるため、業務効率化の実現が可能です。人的ミスも減らせるといえるでしょう。
また、メール配信や広告運用といった機能が搭載されていることも多いため、「施策の設計〜実行まで」をワンストップで実現できる点も魅力といえます。余計な業務をカットすることで、コスト削減にもつながるでしょう。
CRMと関連ツールの違いとは?
CRMと関連ツールの違いとしては、大きく以下の3点が挙げられます。
- MAとの違い
- SFAとの違い
- ERPとの違い
MAとの違い
MA(Marketing Automation)は、主に「見込み顧客の獲得や育成」を目的に利用します。具体的には、自社に興味を持った見込み顧客へ以下のようなフォローをおこない、購買意欲を高めます。
- 資料をダウンロードしたお客さまにあいさつのメールを配信する
- 特定のページを閲覧しているユーザーに詳細な資料を配布する
- 頻繁に閲覧している商品と関連する商品を表示する
自社への興味を高めたうえで営業担当者へ引き継ぐため、成約確率の向上も期待できるでしょう。
SFAとの違い
SFA(Sales Force Automation)は、主に「営業活動を可視化し効率化・組織化すること」を目的に利用します。案件管理や商談履歴の進捗などを可視化し、データを蓄積・分析することで、状況にあわせた適切なアクションを実施できるでしょう。
例えば、以下のようなイメージです。
- 成績上位の営業担当者のトークや顧客フォロー方法などを分析・可視化し社内共有することで、成果を底上げする
- 過去の案件データをもとに「失注傾向」を分析し、原因を改善することで受注率の向上につなげる
- 適宜「案件の進捗状況」「契約確度」などを可視化し、リアルタイムで売上見込みを把握することで営業計画の策定に役立てる
ERPとの違い
EPR(Enterprise Resource Planning)は、主に「企業の基幹業務を一元管理して経営資源を合理的に活用すること」を目的に利用します。販売や給与、人事、生産、財務会計、在庫、勤怠といった企業経営に不可欠な業務を管理し、各業務へ適切に分配することで、自社の経営資源を無駄なく活用できるでしょう。
CRMが提供する代表的な機能
CRMが提供する代表的な機能としては、主に以下の6つが挙げられます。
- 顧客情報管理
- 案件管理
- ワークフロー機能
- 配信機能
- 問い合わせ管理
- データ分析
①顧客情報管理
自社の顧客情報を一元管理する機能です。toC・toBや業界の違いなどによって変わりますが、基本的に以下のような情報を管理します。
- 基本情報(氏名や住所、年代、性別など)
- 過去の商談履歴
- 累計の購入金額数
- 累計の購入回数
- 自社サイトへの訪問履歴
- 問い合わせ内容
- 店舗での接客履歴
上記のような顧客情報を分析することで、ニーズにマッチした施策を設計できます。CRMによっては、自社の業種・業態などにあわせて管理項目をカスタマイズ可能です。
②案件管理
以下のように、案件ごとの進捗状況を管理する機能です。
- 取引先の基本情報(社名や所在地、担当者名など)
- 担当者個人の情報(氏名や所属部署など)
- 過去の商談履歴
- 受注につながる可能性
- 累計取引金額
- 過去の購入製品
- 今後のスケジュール管理
- タスク管理
上記のような情報を一元管理することで、業務効率化だけでなく「成績上位者の営業トークを共有して部署の営業力アップを図る」といった使い方も可能です。
③ワークフロー機能
業務プロセスの自動化を実現する機能です。以下のような業務フローを自動化することで、業務にかかるリソースを削減可能です。
- タスク作成
- タスク割り当て
- 申請データの一覧表示
- 承認作業
- 毎日の活動報告
- 承認ルールの管理
- 承認グループの作成
業務フローを可視化し、全体の動きを把握しやすくすることで、業務効率化にもつながります。
また、「成約確度が高い商談の前にリマインドを送る」「見込み顧客から連絡が来たら通知する」といった対応も可能です。
④配信機能
メール・LINEなどを活用し、お客さまへメッセージを配信する機能です。以下のように、お客さまの状態にあわせたメッセージを配信することで満足度を高め、新規購入者を増やし、リピーターの獲得にもつながります。
- サンプル請求者へお礼や商品情報を配信する
- 一定金額以上の購入者へ特別クーポンを配信する
- 一定期間の購入がないお客さまにおうかがいメッセージを配信する
また、メールの開封率や本文内のURLクリック率なども測定できるため、次回以降のメッセージ改善に役立てられるでしょう。
⑤問い合わせ管理
お客さまからの問い合わせを管理する機能です。電話やメール、チャット、問い合わせフォームなど、さまざまな窓口経由で寄せられた問い合わせを一元管理できます。
CRM上で問い合わせを一元管理し、別部署との連携に要する手間を削減することで、業務効率化につながります。また、問い合わせへの対応履歴を管理すれば「対応済みのお客さまへ誤って二重対応してしまう」といったミスも防げるでしょう。
⑥データ分析
データ分析機能を活用することで、幅広い情報をもとにお客さまニーズや成約角度などを把握し、相手の状態にあわせた適切な施策を設計・実行できます。システムによっては分析結果をレポートで可視化できるため、全体像を把握してスムーズに状況をチェックできるでしょう。
分散した販売データを統合・分析するダッシュボード
「STORES データ分析」
CRM活用のメリット
CRMを活用するメリットとしては、主に以下が挙げられます。
- 顧客情報を一元で管理できる
- 情報共有をリアルタイムにおこなうことができる
- 自社のコア業務に集中できる
- チームでの連携力の強化
- 顧客満足度の上昇
顧客情報を一元で管理できる
社内の顧客情報を一元管理することで、関係者の所属部署や勤務場所などを問わず、データをスムーズに確認できます。
「社内からでないとアクセスできない」「情報の管理場所がわからず探さなければいけない」といった手間を省くことができ、業務効率化を実現できるでしょう。
情報共有をリアルタイムにおこなうことができる
情報を一元管理し、リアルタイムにデータを共有することで、以下のように、さまざまなアクションをスムーズに実行できます。
- サポートセンターに来た「営業部署の緊急対応が必要な事案」を共有し迅速に対応する
- 出張先から部下の業務進捗を確認してフィードバックをおこなう
- 商談内容を開発部門と共有してニーズを把握し、サービス改良に活かす
とくに、お客さまからの問い合わせをスムーズに対応できれば、より満足度を高められるでしょう。
自社のコア業務に集中できる
情報共有の手間を削減することで、各部署は本来のコア業務にリソースをかけやすくなります。
例えば、営業部門であれば「新規顧客の開拓や既存フォロー施策の設計」、開発部門であれば「ニーズの分析や開発作業」といった業務です。コア業務へリソースを確保することで、業績を効率的に向上できるでしょう。
チームでの連携力の強化
情報共有をスムーズに実行し、チーム内でコミュニケーションをとる機会が増えれば、営業活動の属人化を防ぐことが可能です。また、以下のような連携力の強化が期待できます。
- 成績上位の営業パーソンのノウハウを共有し、全社の売上アップを図る
- 問い合わせ内容を該当部署へスムーズに共有し、迅速に対応する
- 市場調査の結果を共有し、開発へ役立ててもらう
顧客満足度の上昇
お客さまへ迅速に対応しつつチームで連携し、ニーズにマッチした施策を設計・実行することで、最終的な顧客満足度を上げることができます。その結果、リピーターが増え、売上アップを狙えるでしょう。
実際に、お客さまの購買履歴や好みなどを分析し、パーソナライズされた施策を展開したことで「問い合わせ40%増加・コンバージョン率25%向上・売上20%増加」という結果を残した事例もあります。
CRM活用のデメリット
CRMの活用には、以下のようなデメリットもあります。
- 導入・運用に大きなコストがかかる
- 効果が出るまでに時間がかかる
- マニュアル・業務フローの整備・更新が必要
導入・運用に大きなコストがかかる
CRMを導入・運用する際は、主に以下のようなコストが必要です。
【クラウド型】
「クラウド型」とは、インターネット上に設置したサーバーで管理しながら運用する形態のことです。物理的なサーバーは不要であり、インターネットに接続すれば利用できます。
このクラウド型で発生するコストは、主に以下の通りです。
- 初期費用
- 月額基本料金
- オプション料金
【オンプレミス型】
「オンプレミス型」とは、自前でサーバーを設置して運用する形態のことです。外部環境から切り離してシステムを運用できるため、サーバー攻撃といった外部からのセキュリティリスクを抑えられます。
このオンプレミス型で発生するコストは、主に以下の通りです。
- 初期費用
- サーバー設置時の工事費用
- サーバーを設置する場所代
システムごとで「基本料金に含まれる内容」や「従量課金の金額の増え方」などは異なるため、資料や担当者の話をくわしくチェックし、予算にマッチするかを判断しましょう。
効果が出るまでに時間がかかる
CRMで施策を実行しても、短期的に成果が出るとは限りません。想定より売上が伸びなかったり、お客さまから期待した反応が返ってこなかったりすることもあります。
そのため、CRMを活用する際は、施策の効果測定を実行し、中長期的な視点で少しずつ目標へ近づける意識が必要です。
マニュアル・業務フローの整備・更新が必要
CRMを導入すると業務の進め方を変える必要があるため、社内のマニュアル・業務フローを整備および更新をしなければなりません。
CRMの機能や操作方法などを覚えてスムーズにフローへ組み込むには、社内で担当者や専門部署を設けて、運用に注力できる状態を整えるとよいでしょう。
CRMを導入・活用する流れ
CRMを導入し活用する基本的な流れは、以下のとおりです。
- 目標設定をする
- 評価の基準を決める
- データの入力をする
- データ分析をおこない施策の設定をする
- お客さまとのコミュニケーションを改善する
目標設定をする
自社が達成したい目標を設定することで、適切な機能や操作性を持つCRMを選べます。例えば、「メール施策を中心に活用してお客さまをフォローしたい」という場合は、メール配信機能に重点を置いて選ぶ、といったイメージです。
目標は、自社の課題を踏まえて数値で設定しましょう。目標を可視化することで、運用による成果を測定し、適切に改善できるようになります。
評価の基準を決める
目標までの進捗度合いを評価する基準(KPI)を決めましょう。部署別におけるKPIとしては、例えば以下が挙げられます。
- 営業部門:新規顧客の獲得数やリピーターへ引き上げた数、営業件数、アポイント獲得数、成約件数など
- マーケティング部門:サイトのアクセス数や見込み顧客の獲得数、コンバージョン率、フォーム誘導率など
上記のようなKPIを数値で管理し、進捗度合いを適宜チェックしながら改善を重ねることで、効率的に目標達成へ近づけられます。
データの入力をする
なるべくリアルタイムで顧客情報をCRMへ入力しましょう。データの取得段階で適宜入力すれば、より正確な顧客情報を集めて施策の精度を高められます。
入力時は、表記ルール(全角・半角や略称の記載方法など)を統一したり入力項目を明確化したりすることで、大量の情報を抜けもれなく活用できるでしょう。
データ分析をおこない施策の設定をする
集めた顧客情報を分析して施策を設定しましょう。データをもとに施策を設計・実行し、顧客ニーズにあわせてアプローチすることで、より効果的に成果を残せます。
例えば、「リピーターの特徴に該当する新規顧客を洗い出して、優先的にアプローチする」「離脱の特徴に当てはまるお客さまを、メッセージで優先的にフォローする」といったイメージです。
お客さまとのコミュニケーションを改善する
顧客情報の内容や施策の成果などを踏まえて、お客さまとのコミュニケーションを改善しましょう。
結果にあわせてアプローチ方法を改善して、お客さまのニーズにマッチしたコミュニケーションをとれるようになれば、信頼関係が構築され売上アップを実現しやすくなります。
CRMツールの選び方
CRMツールの具体的な選び方は以下のとおりです。
- 機能面で比較する
- サポート面で比較する
- セキュリティがしっかりしているか
- 複数のツールとの連携力があるか
機能面で比較する
CRMの機能には、システムごとでメール配信やLINE配信、アンケート作成などさまざまな種類があります。そのため、自社の目標と照らし合わせて最適な機能を搭載しているCRMを選びましょう。
例えば、「今後はメール配信を中心に施策を設計したい」という場合は、メール配信機能の充実度合いをチェックしておくと、導入後のミスマッチを防げます。
サポート面で比較する
CRMのサポート体制には、以下のようにさまざまな種類があります。
- 電話やメールサポートのみ
- ユーザー向けのセミナーが受けられる
- マーケティング施策の設計や運用を代行してもらえる
「CRMの運用経験がないため、施策設計や効果測定まで手厚くサポートしてほしい」というように、自社の知見の深さや運用状態を踏まえて投入できるリソースを検討し、適切なサポートが受けられるCRMを選びましょう。
セキュリティがしっかりしているか
情報漏洩など、セキュリティ関連のトラブルが発生すると、自社の信頼低下を招くため、強固なセキュリティ体制を構築しているCRMを選びましょう。例えば「アクセス権限を細かく設定できる」「操作ログを全て追跡できる」といったツールであれば、安心です。
セキュリティ体制の内容だけでなく、サイトや担当者の話をチェックして「過去のトラブル件数」「万が一への対処方法の明確さ」などを確認しておくのもよいでしょう。
複数のツールとの連携力があるか
システムによって異なりますが、CRMはSFAやMA、名刺管理ツール、ECシステム、CMS、ERPなど、数多くの外部ツールと連携できます。
連携によって施策の幅が広がるため、具体的な連携力の強さをチェックしましょう。例えば、ECシステムと連携して「特定の商品ページを複数回閲覧したお客さまに、関連商品の紹介メールを配信する」といったイメージです。
まとめ
CRMとは、顧客と長期的な信頼関係を構築するための考え方、および実現に向けて使うシステムのことです。CRMで管理した顧客情報を分析してニーズにマッチした施策を設計することで、満足度を高めながら売上アップを実現できるでしょう。
※本記事の内容は情報提供のみを目的としており、アドバイスを提供するものではありません。記事内容の正確性や妥当性について細心の注意を払っておりますが、それらを保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。ご了承ください。また、記載の制度等は変更される場合がありますので、最新情報をご確認ください。