Web広告やSNS運用の世界で頻繁に目にする「インプレッション」ですが、正しい意味をご存知でしょうか。
この記事では、インプレッションの基本的な意味から、PVやリーチといった混同しやすい指標との違い、具体的な活用方法までわかりやすく解説します。
インプレッションの意味
Webマーケティングにおけるインプレッションとは、WebサイトやSNSなどで広告が「表示された回数」を示します。
デジタルマーケティングにおいて、広告やコンテンツがどれだけユーザーの目に触れたかを測るための、基本的な指標のひとつです。
インプレッションの測定方法
インプレッションは、ユーザーがWeb広告やSNS投稿を実際に見たか、クリックしたかにかかわらず、画面に表示された時点で1回とカウントされます。
インプレッション数は、利用している広告プラットフォームやSNSの管理画面で確認できます。たとえば、Google広告、Yahoo!広告、Meta社(Facebook、Instagram)、X(旧Twitter)などの広告管理ツールやインサイト機能です。
キャンペーンごとや広告ごとのインプレッション数が表示されており、かんたんに測定することが可能です。
インプレッションとその他の指標の違い・関係
インプレッションは広告効果を測る出発点ですが、ほかにも重要な指標は数多く存在します。それぞれが示す意味は異なり、組み合わせて分析することで、より深く広告の効果を理解できるでしょう。
ここでは、特に混同されがちな5つの指標との違いを解説します。
1.PV(ページビュー)
PV(ページビュー)は、Webサイト内の特定のページが閲覧された(表示された)回数を指します。インプレッションが「広告」の表示回数であるのに対し、PVはWebサイトの「ページ」が表示された回数という点が大きな違いです。
たとえば、ひとつのページに3つの広告が掲載されている場合、ページが1回表示されるとPVは1ですが、インプレッションは3となります。PVは、サイト全体の人気度や、どのコンテンツがよく見られているかを測る指標です。
2.リーチ数
リーチ数とは、広告が「何人のユーザーに届いたか」を示す指標です。表示回数ではなく、広告を見た「人数(ユニークユーザー数)」をカウントします。
たとえば、あるユーザーが同じ広告を5回見た場合、インプレッションは「5」になりますが、リーチ数は「1」のままです。広告がどれだけ多くの人に広がったか、認知度を測る際に重要な指標となり、インプレッション数とあわせて見ることで、広告の配信頻度が適切かを判断できます。
3.エンゲージメント
エンゲージメントとは、広告や投稿に対してユーザーが起こした「反応(アクション)」の総数を指します。具体的には、「いいね」「コメント」「シェア」「保存」「クリック」などが含まれます。
インプレッションが広告の表示回数という量的な指標であるのに対し、エンゲージメントはユーザーがどれだけ関心を持ったかという質的な指標です。インプレッションが多くてもエンゲージメントが低い場合、広告内容がユーザーに響いていない可能性があります。
4.CTR(クリック率)
CTR(Click Through Rate)は、広告が表示された回数(インプレッション)のうち、どれくらいの割合でクリックされたかを示す指標で「クリック数 ÷ インプレッション数 × 100 (%)」で算出されます。
CTRが高いほど、広告がユーザーの興味を引き、クリックを促す魅力的なものであったと判断できるでしょう。インプレッション数が多くてもCTRが低い場合は、広告のクリエイティブやテキストに改善の余地があると考えられます。
5.CVR(コンバージョン率)
CVR(Conversion Rate)は、広告をクリックしてサイトを訪れたユーザーのうち、どれくらいの割合が成果(コンバージョン)に至ったかを示す指標で、広告の最終的な費用対効果を測る上で重要な指標のひとつです。
コンバージョンには、商品購入、会員登録、問い合わせなどが設定され「コンバージョン数 ÷ クリック数 × 100 (%)」で算出できます。インプレッションやCTRが高くても、CVRが低ければビジネス上の成果にはつながっていません。
インプレッション単価(CPM)とは?
インプレッション単価(CPM)とは、「Cost Per Mille」の略で、広告が1,000回表示されるごとにかかる費用を表す指標のことです。「Mille」はラテン語で「1,000」を意味します。
CPMは、ブランドの認知度向上や新商品の告知など、クリックやコンバージョンよりも「多くの人に見てもらうこと」を目的とした広告キャンペーンで用いられる、課金方式の基準となる指標です。
インプレッション単価の計算方法
インプレッション単価(CPM)は、以下の計算式で算出できます。
CPM = 広告費用 ÷ 表示回数(インプレッション数) × 1,000
たとえば、10万円の広告費をかけて広告が50万回表示された場合、CPMは「100,000円 ÷ 500,000回 × 1,000 = 200円」となります。この計算で、1,000回表示するのに200円のコストがかかったことがわかり、異なる広告キャンペーンのコスト効率を比較・検討できます。
運用型広告の課金方法
運用型広告には、インプレッション課金(CPM課金)以外にも、目的応じてさまざまな課金方法が存在します。代表的なものに「クリック課金(CPC課金)」があります。広告がクリックされるたびに費用が発生する方式で、Webサイトへの誘導を目的とする場合に有効です。
SNS広告では「エンゲージメント課金(CPE課金)」があり、いいねやシェアなどの反応に対して課金されるのが特徴です。商品購入や会員登録といった成果(コンバージョン)が発生した時点で、はじめて費用がかかる「成果報酬型課金(CPA課金)」もあります。
これらの課金方式は、認知拡大、見込み客獲得、販売促進など、広告の目的によって使い分けることが広告効果を最大化する鍵となります。
インプレッションの活用方法
インプレッションは、単に表示回数を知るだけの指標ではありません。広告がユーザーにどれだけ届いているかを測る基本の指標であり、この数値を分析することで、広告戦略全体の改善につなげられるのです。
ここでは、代表的な広告媒体ごとにインプレッションの具体的な活用方法を見ていきます。
リスティング広告
検索エンジンの結果ページに表示されるリスティング広告では、インプレッションは「広告が表示された回数」を意味します。
インプレッションが想定より少ない場合、設定したキーワードの検索ボリューム自体が小さいか、入札単価や広告の品質が低く、競合に負けている可能性があります。
広告が表示可能だった合計回数のうち、実際に表示された回数の割合である「インプレッションシェア」という指標を確認し、機会損失が起きていないか分析することが重要です。
ディスプレイ広告
Webサイトやアプリの広告枠に表示されるディスプレイ広告では、インプレッションは認知度拡大の重要な指標です。
インプレッションが伸び悩む場合、設定したターゲティング(年齢、地域、興味関心など)が狭すぎるのかもしれません。逆に、インプレッションは多いのにクリック率が低い場合は、広告クリエイティブがターゲットに響いていないと判断できます。
複数のバナーでA/Bテストをおこない、高いインプレッションとクリック率を獲得できるデザインを検証しましょう。
SNSでの広告
FacebookやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNS広告では、タイムライン上の広告表示回数がインプレッションとなります。
SNSでは情報が素早く流れていくため、まずインプレッションを獲得し、ユーザーの目に留めてもらうことが第一歩です。インプレッション数とエンゲージメント数をあわせて見ることで、コンテンツの質を評価できます。
ターゲットがアクティブな時間帯を狙って配信することも、インプレッションを効率的に増やす上で有効な手法です。
動画配信サイトでの広告
YouTubeなどの動画広告では、動画の再生前に表示されるインストリーム広告や、検索結果に表示されるディスカバリー広告などでインプレッションが計測されます。動画広告では、インプレッションだけでなく「視聴回数」や「視聴完了率」も重要な指標です。
インプレッションが多くてもすぐにスキップされてしまう場合は、動画の冒頭数秒でユーザーの心をつかむ工夫が必要です。サムネイル画像もインプレッション数やクリック率に大きく影響します。
Google ビジネス プロフィール
Google ビジネス プロフィール のインプレッションは、Google 検索やGoogle マップで自社の店舗情報がユーザーに表示された回数を示します。店舗を持つビジネスオーナーにとって、無視できない指標です。
ユーザーが「地域名+業種」で検索した際に表示されるため、インプレッション数は潜在的な来店客数と捉えられます。定期的な情報更新をおこなうことで、表示回数を増やし、来店促進につなげることが可能です。
インプレッションを増やすための方法
広告の成果は、ユーザーに表示されなければはじまりません。インプレッションは、その第一歩となる重要な指標です。もしインプレッション数が伸び悩んでいるなら、いくつかの基本的な要素を見直す必要があります。
ここでは、広告のインプレッションを増やすための具体的な4つの方法を解説します。
広告予算を見直す
もっとも直接的な方法が、広告予算の増額です。多くの広告プラットフォームでは、設定された日予算や通期予算の上限に達すると、広告の配信が停止してしまいます。
競合が多いキーワードやターゲティングで配信している場合、予算が少ないと広告表示の機会そのものが大きく制限されます。「インプレッションシェア損失率(予算)」の指標を確認し、予算不足が原因で機会を逃していないかチェックしましょう。
予算を引き上げることで、これまで表示されていなかった時間帯やユーザーにも広告を届けられ、インプレッションの増加が期待できます。
検索キーワード・マッチタイプを変更する
リスティング広告において、インプレッションが増えない原因として、キーワード選定の問題が考えられます。ニッチすぎるキーワードや検索ボリュームが極端に少ないキーワードばかりを設定していると、表示機会は限られます。検索数が多く、関連性の高いキーワードを追加してみましょう。
また、キーワードのマッチタイプを「完全一致」から「フレーズ一致」や「部分一致」に広げることで、より多くの検索語句に対して広告が表示されるようになり、インプレッションの増加につながります。
ただし、意図しない検索語句にも表示されるリスクがあるため、除外キーワードの設定をおこない、無駄な表示を抑えることが重要です。
広告・LPの質を上げる
Google広告などでは「広告の品質(品質スコア)」という概念があり、スコアが低いと高い単価で入札しても広告が表示されにくくなります。品質を上げるには、ユーザーの検索意図と広告文の関連性を高めることが重要です。ユーザーが思わずクリックしたくなるような、具体的で魅力的な広告文を作成しましょう。
広告のリンク先であるランディングページ(LP)の内容や使いやすさも品質評価の対象です。ページの表示速度を改善したり、ユーザーが求める情報をわかりやすく提供したりすることで、広告の品質が向上し、結果的にインプレッションの増加につながります。
広告の配信媒体を見直す
自社のサービスや商品のターゲットとなるユーザー層がいない媒体に広告を配信しても、効果的なインプレッションは得られません。たとえば、若者向けの商材をシニア層が多い媒体に出しても関心を持たれず、インプレッションも伸び悩むでしょう。
自社ターゲットユーザーの年齢、性別、興味関心などをあらためて分析し、もっとも利用されている媒体を見極め、配信先を最適化することが重要です。ディスプレイ広告の場合は、配信先のサイトやアプリを精査しましょう。
関連性の低い場所への配信を停止することも、広告の効率を高めて質の高いインプレッションを増やす上で有効です。
まとめ
この記事では、デジタルマーケティングの基本指標である「インプレッション」について、その意味からほかの指標との違い、具体的な活用法までを解説しました。
インプレッションは、広告が表示された回数を示すものであり、リーチやPVとは異なる概念です。違いを正しく理解し、CTRやCVRといったほかの指標と組み合わせて分析することで、広告キャンペーンの効果を多角的に評価できます。インプレッションを増やすための施策を実行し、広告効果の最大化を目指しましょう。