PayPayやd払い、楽天ペイなどのQRコード決済は、近年普及が進んでいます。
一方で、QRコード決済サービスの数が多く、店のレジにはQRコードが乱立していることも珍しくありません。あまりにQRコードが多すぎると、どのQRコードをスキャンすればいいのかわかりにくいこともあります。
そうした決済サービスごとのQRコードをひとつにまとめるのがJPQR(ジェイ・ピー・キュー・アール)です。
この記事では、JPQRとはどのようなものなのか、導入するメリットやデメリット、決済手数料、導入方法などを解説します。JPQRを知りたい人は、ぜひご一読ください。
QRコード決済の統一規格「JPQR」とは?
JPQRとは、複数あるQRコード決済サービスのQRコードをひとつにまとめるための規格です。QRコード決済を提供している決済サービスは多くありますが、サービスごとに独自のQRコードを使っており互換性がありません。
そのため、複数の決済サービスを導入すると、店頭のQRコードが増えていき、決してわかりやすいとはいえない状況が生じていました。
そこで登場したのがJPQRです。JPQRであれば、ひとつのQRコードで複数のQRコード決済が使えます。
JPQRは一般社団法人キャッシュレス推進協議会が策定し、総務省が主導していました(現在は一般社団法人キャッシュレス推進協議会に運営を移管)。国を挙げて推進していた理由として、政府は2025年6月までにキャッシュレス決済の普及を40%程度に増やす目標があるからです。
JPQRは2020年6月から申し込み受付が始まっており、法人・個人事業主ともに導入が可能です。
参考:経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会」(2025年5月)
JPQRを導入するお店側のメリットとは
JPQRを導入するお店側の主なメリットを、4点解説します。
1枚のQRコードで複数サービスの支払いが可能
JPQRは、日本国内で利用されている多くのキャッシュレス決済サービスに対応しています。
これまでは、決済サービスごとに異なるQRコードを用意する必要があり、カウンターの周りが雑然となりがちでした。
JPQRの導入により、一つのQRコードを設置するだけで、PayPay、d払い、LINE Payなど、さまざまな決済サービスの支払いに対応できます。
継続利用する場合の手数料は無料
JPQRは、導入後に継続利用する場合の手数料が無料です(※一部決済事業者との契約内容によります)。
初期費用や月額利用料を気にすることなく、キャッシュレス決済の導入・運用がしやすくなります。
複数のサービス、複数の店舗の売上をひとつの画面で確認可能
JPQRの利用により、複数の決済サービスや、複数店舗の売上情報をひとつの管理画面でまとめて確認することが可能です。
これまで、サービスごと・店舗ごとに異なる管理画面で売上を確認していた手間が省け、売上管理や経理業務の効率が大幅にアップします。
QRコードを破損しても再発行が無料
お店で使用するQRコードは、経年劣化などで破損・汚損することがあります。
JPQRは、万が一QRコードが使えなくなっても、無料で再発行が可能です。新たに費用を負担することなく、安心して利用できます。
JPQRを導入するデメリットはある?
JPQRの導入にはデメリットもあります。
まず、JPQRは申し込みと統一QRコードを提供するのみで、それ以外のことは各決済サービスと個別に対応しなければなりません。例えば、解約や入金口座の変更はそれぞれの決済サービスごとに手続きが必要です。
また、複数のサービスを一括導入した場合、入金サイクルや手数料などが決済サービスによって異なるため、売上の管理が複雑になる可能性もあります。
売上に関しては、JPQR統一管理画面から一括で閲覧できます。
また、現在(2025年4月時点)新規受付をおこなっている決済サービスは以下です。導入したい決済サービスが新規受付をおこなっているかどうかをあらかじめ確認しておく必要があります。
- ゆうちょPay、こいPayなどの銀行Pay
- d払い
- au PAY
- commoney
- 楽天ペイ
- イオンペイ
- らんらんPay(北海道室蘭市)、ぎふ旅コイン(岐阜県)などの地域通貨
JPQRが使える主要な決済サービスの入金サイクルや入金手数料をまとめましたので、参考にしてみてください。
(2025年4月1日現在)
参考:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「JPQR 参画決済サービス一覧」(2025年5月)
JPQRの決済手数料はどのくらい?
JPQRの決済手数料は、各決済サービスによって異なります。キャンペーン中で決済手数料が無料のサービスから、決済手数料3.25%までさまざまです。決済サービスを決済手数料順にまとめましたので、参考にしてみてください。
(2025年4月1日現在)
なお、以下の記事によると2019年の時点でJPQRの普及率は1.5%ほどといわれています。
参考:日経クロステック/日経コンピュータ「普及率1.5%の国策統一コード「JPQR」、PayPayの手数料格差で有名無実に」(2025年5月)
手数料の格差が普及の妨げになっているようです。総務省が推進していた体制からキャッシュレス推進協議会に運営が移管されたこともあり、今後の将来性に少し不安が残ります。
JPQR利用者側のメリット・デメリットとは
JPQRは便利な反面、注意しなければならない点もあります。お客さまのメリットとデメリットを把握した上で、導入を検討しましょう。
メリット
JPQRを利用するお客さまには、主に以下の3つのメリットがあります。
素早くお会計ができる
JPQRは、お店側が提示する複数の決済サービスに対応したQRコードを、お客さまが自身のスマホ決済アプリで読み取るだけで支払いが完了する仕組みです。
これにより、複数のアプリを使いわける手間を省けます。
普段使いしている決済サービスを利用できるため、レジ前でのアプリ選択や起動に迷う時間が短くなり、スムーズな会計が実現します。支払いにかかる時間を短縮できるのは、お客さまにとって大きな利点といえるでしょう。
マイナポイントを貯められる
マイナンバーカードの普及や活用の促進を目的に、これまで2度にわたり「マイナポイント」のキャンペーンが実施されました。
2022年から2023年にかけて実施された「マイナポイント第2弾」では、マイナンバーカードを新たに取得し、キャッシュレス決済でのお買いものをした方に最大5,000円分のポイントが付与され、消費意欲の向上とともにJPQRの導入を後押ししたといえます。
今後マイナポイントのキャンペーンが行われるかは未定ですが、新たなキャンペーンの実施が期待されます。
QR決済を利用できる店舗の増加
JPQRが普及すれば、お店側は複数の決済サービスを導入するハードルがさがります。これまでキャッシュレス決済の導入が難しかった小さなお店や地方のお店も、QRコード決済の利用がしやすくなるでしょう。
また、お客さまは商店街の個人商店や地方の観光地など、より多くの場所で使いなれたスマホ決済を利用可能です。現金を持ち歩く必要性が減るなど、利便性が大きく向上します。
デメリット
利便性の高いJPQRですが、決済時に端末や通信環境に依存するデメリットもあります。
スマホが使えない状況では決済できない
JPQRは、スマホアプリを通じて決済がおこなわれるます。そのため、スマホ本体が利用できない状況では支払いができません。
具体的には、スマホのバッテリーが切れた場合やスマホが故障した場合、またはアプリの起動ができない通信圏外やWi-Fi環境がない場所などです。
そのため、JPQRを主な決済手段としている場合でも、万が一に備えて現金やクレジットカードなど、ほかの支払い方法を準備しておきましょう。
JPQRの導入方法
JPQRの導入方法を解説します。JPQRはJPQR総合情報サイトから申し込めます。申し込みの手順は以下のとおりです。
- JPQRの利用規約や各決済サービスの契約条件などを確認する
- 審査に必要な書類を準備する
- EXTENDアカウントの作成
- 必要な情報を入力して申し込む
- 審査通過後メールが届き、QRコードなどが送られてくる
利用規約や契約条件は申し込みページから確認できます。
審査に必要な書類は以下の表のとおりです。
本人確認書類は運転免許証かパスポート+住所確認書類のいずれかが必要です。そのほかの書類、例えばマイナンバーカードでは認められないので注意しましょう。法人で銀行Payを新規に申し込む場合は、代表者の本人確認書類が求められます。
鍼灸院や小売業など許認可が必要な業種の場合には、開設届出済証明書や古物商許可証などの写しを用意しましょう。
事業内容を確認できるWebサイトがない場合は、会社案内やパンフレット、チラシなど事業内容を確認できる資料も必要です。
申込書や資料が用意できたら、メールで送信しましょう。現時点では、郵送での申し込みは受け付けていないため注意しましょう。
申し込みからQRコードなどの送付までは最大2ヵ月かかります。導入を検討しているのであれば、早めに手続きを進めたほうがよいでしょう。
>>JPQRのお申し込みはこちら
JPQRのメリット・デメリットまとめ
JPQRとはひとつのQRコードで複数のQRコード決済サービスが使えるようになる規格です。JPQRを導入すれば、店頭に設置するQRコードがひとつで済むほか、申し込みも一括でおこなえるなどのメリットがあります。
一方でJPQRの役割は、一括申し込みができることとQRコードの提供に限られています。手数料や入金サイクルなどは各決済サービスによって異なるため、注意しましょう。
決済サービスによっては顧客層が異なるため、自分の事業の顧客層に合った決済サービスを選択し、その上でJPQRを導入すべきかどうかを検討するのがおすすめです。