FUGLEN(フグレン)は、ノルウェー・オスロに本店を持つ、人気のコーヒーショップです。東京・福岡などに6店舗展開し、2024年には韓国・インドネシアにも進出。コーヒー好きの間では言わずと知れた名店です。今回は店舗や商品へのこだわりやアプリの導入のきっかけについて、FUGLEN TOKYOの代表である高橋さんにお話を聞きました。
FUGLEN(以下、フグレン)は1963年にノルウェーのオスロで創業し、今年で62年目になります。2012年に海外進出第一号店のFUGLEN TOKYOを東京・渋谷にオープンし、現在は日本国内6店舗の運営を行なっています。
コンセプトは3つあります。“コーヒー”と“カクテル”と“ヴィンテージデザイン”です。朝から夕方まではコーヒー屋さん、夕方から夜にかけてはカクテルバーに変わります。店内に置いてある家具などは、ほとんど全てがノルウェーのミッドセンチュリーのヴィンテージです。現在は家具の販売は停止していますが、元々は家具屋としても営業していました。コーヒーだけではなく、カクテルとデザインの要素も合わせて、ライフスタイル全体のブランドであるということを大切にしています。
それぞれにこだわりはありますが、コーヒーでいうと、自社で生産国を訪ねて生豆を仕入れ、焙煎をしています。それぞれのコーヒーが持っているポテンシャルを最大限生かせるような焙煎と抽出にこだわっています。
いわゆるブレンドはせず、ひとつの地域、ひとつの農園、ひとりの生産者等のくくりでコーヒーを作っているので、それぞれの味わいの違いがわかりやすいと思います。果実味が豊かなものもあれば、甘さがしっかりあるものもあって。それぞれのコーヒーの個性の違いを楽しんでいただきたいと思っています。
もともと紙のポイントカードを導入していて、コーヒー1杯で1ポイント、10杯飲むと1杯無料になる、というようなカードを使っていたんです。常連さまはいつもこのカードを何枚も更新してくれていて、そういったヘビーユーザーの方に、もっと継続的なメリットを提供できればというところから、紙での管理ではなくデジタルに移行することを考えはじめました。
そうですね。もちろん常連さまに限らず全てのお客さまの存在がありがたいのですが、やはりいつも来てくれる方々も大切にしていきたいなと思います。人によってコーヒー屋さんに行く頻度ってバラバラだと思うんです。でもその中で、「コーヒー飲みたいな」と思ったときに、我々のことを思い出してもらえるようなタッチポイントは欲しいなと思っていたので、そこも今回アプリを導入するきっかけのひとつだったかなと思います。
店舗での体験と、ネットショップの体験をひとつに繋げられるところが一番大きい決め手かなと思っています。
店頭でコーヒーを作って、それをお客さまに飲んでいただくのが我々のビジネスの根幹ではあるものの、それ以外の時間、例えばご自宅でスマホ見ているときに、「フグレンに新しいコーヒーが入ったんだ」「今度こんなイベントやるんだ」などの情報をお届けできると、そこでも繋がっていられるのかなと思うので。店舗でのタッチポイントだけじゃなくて、店舗にいらっしゃらない時間でも、私たちとお客さまの繋がりが持てるっていうのは、このアプリの強みなのかなと思っています。
そうですね。あとは、アプリ自体のUI・UXも良かったです。実際にモックアップ(※)を作りながらデザインとしてもハマるものを探していたのですが、その点でもかなりフィットしたのかなと思います。
(※)モックアップ:デザインの外観やイメージを確認するためのサンプルのこと
アプリを使い始めてから、溜まったデータを見てみて、驚いたことがありました。
アプリをダウンロードいただくために、店頭に店舗固有のQRコードを置いており、どの店舗でダウンロードいただいたか追跡できるようにしています。その結果、アプリが一番ダウンロードされている店舗は、世田谷区にあるFUGLEN 羽根木公園店だとわかりました。
しかし、店舗への来客数でいうと、渋谷店や浅草店の方が何倍も多いんです。「なぜだろう?」と思い、分析してみると、いわゆる観光地の店舗では、インバウンドの方々や旅行者のお客さまが多く、「ポイントを貯めるモチベーション」が生まれにくいからではないかと分かりました。
一方、FUGLEN 羽根木公園店のような住宅街、「ローカルな場所」にある店舗は、近隣の方や常連さんがいつも来てくれていることが想像できます。それぞれの店舗の特徴が見えてくると、それに対する施策も今後考えやすいので、新しいインプットになったと思います。
これまでは現場の肌感覚からの定性的な分析しかできなかったところが、しっかりしたデータで数字として浮かび上がってくると解像度が上がりますよね。その次の施策を考えやすい、非常にいいインプットになりました。
弊社のネットショップは全国にお客さまがいるのですが、実店舗があるのは、今は東京と神奈川と福岡だけ。全国各地のお客さまが店舗があるエリアに来たときに、ネットショップで買い物したポイントが貯まっているし、せっかくだからフグレンに行ってみようという動きが期待できるんじゃないかと思っています。
また、アプリには全店舗の情報が出てくる設計をしているんですが、それもいいなと思っていて。「ここにお店あったんだ。知らなかった」という声もあるので、情報発信のプラットフォームとしてもアプリが機能していくんじゃないかなと思っています。
まだ詳しい分析はできていないのですが、今後新しい店舗も展開していく中でデータも増えていくので、お客さまの人物像やライフタイムバリューも浮かび上がってくるんじゃないかと期待しています。
そうですね。いろんな店舗展開をしていきたいと思っているんですが、すべての店舗で同じ施策を行うことはあまり想定していません。店舗ごとのローカル性やコミュニティ性に合わせた展開をしていきたいと思っていますが、そのときに当然、既存店舗のデータは非常に重要だと思っています。
「ローカルコミュニティに根付いたお店だとこういうお客さまが多いよね」「インバウンドの方が多いお店だとこういう需要が高いよね」「こういう施策がはまるよね」だったり。そういったものはどんどん活用していきたいなと思っています。
すごく特別な体験ができる場所というよりは、日常のなかのちょっとした価値を感じられるような存在でいたくて。
なので、他社さんと比較して設定したわけではなく、店舗に来ていただくハードルを下げたいという想いが大きかったです。
「ポイントカードを忘れちゃって何枚も持っている」というお客さまもいたんですが、アプリにしたことでポイントが分散することがなくなって便利になったみたいですね。
また、常連さんでも、前回自分がどの豆のコーヒーを飲んだか忘れちゃうことも多いんですよ。「美味しかったあの豆はどこのだっけ?」「前回はブラジルの豆だった気がするんだけど、同じようなコーヒーが飲みたい」といった時に、アプリを確認していただければ履歴がわかるので便利ですよね。
我々側としても、「前回と似た味わいのコーヒーが良ければ、こちらはどうですか?」だったり、あるいは「前回とは趣向を変えて、今日はこちらのコーヒーはどうですか?」というように、お客さま一人ひとりに合わせて提案ができるので、お互いにとって良いことだなと感じています。
紙のポイントカードの時は「いつも来てくれていますね」程度の理解だったお客さまに対して、より解像度が上がりました。名前はもちろん、どの程度の頻度で店舗に来てくれていて、どんなオーダーをしていただいているのかがよりくっきり見えてきたので、サービスやアプローチがカスタマイズしやすくなりましたね。
あと、お誕生日の月にちょっとしたプレゼントをお渡ししているんですけど、「お誕生日おめでとうございます」と言えるのもアプリのおかげかなと思っています。そういった“あったかい関係性”をもっと築いていければいいなと思っています。
店舗を展開していきたいとお話したと思うんですが、がむしゃらに肥大化していきたいわけではありません。毎日の営業の中でお客さまに提供できている価値をさらに広げていきたいなと思っているので、コンセプトやクオリティを保ちつつ、いろんな都市に店舗を作りたいなと思っています。
あとは既存の店舗でもお客さまに新しい提案をしていきたいと思っています。イベントをやってみたりとか、新しいメニューを出したりとか。新しい価値の提案というのも同時にしていければと思っています。
単なるポイントシステムだけではなくて、お客さまとのコミュニケーションのプラットフォームになればいいなと思っています。アプリからオンラインショップに行っていただいて、コーヒー豆を買っていただくっていうのもいいと思いますし、あとはイベントや新メニューの情報を発信できる場にしていきたいなと。SNSでも情報発信はしているものの、ターゲットがかなり広くなってしまうので……。普段お店に来ていただいている方に対して、よりカスタマイズされた情報発信を、アプリを通して実現できればなと思っています。
FUGLEN(フグレン)は、東京、福岡などに6店舗を展開しているコーヒーショップです。コーヒー、カクテル、ヴィンテージデザインの3つのコンセプトを持ち、ライフスタイル全体のブランドであるということを大切にしています。